官能小説

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 白いスクリーンの中で、美しい貌がはにかんだように微笑む。白い滑らかな肌に、背中までサラリと伸びた茶色の髪。形の良い眉の下にはぱっちりとした大きな目が、今は少しだけ細められて長い睫毛の影で煙っている。
「サエ……」
 そっとその人物の名を呼ぶと、スクリーンの中で、ほんのりと色付いた唇が薄く開いた。
『………………』
「こんにちはぁ」
 形の良い唇が無言で言葉を紡ぐのをジッと見詰めていた佐竹は、突然誰かに声を掛けられてハッとして視線を戸口に向ける。そこには、最近入部した新入生が、少しだけ開けたドアの隙間から顔だけ出して、躊躇いがちに微笑んでいた。
「おっ、拓夢ちゃん」
 佐竹は急いでプロジェクターを止めると、立ち上がって戸口の脇にある照明のスイッチを押す。そうすると、薄暗かった室内が一瞬でパッと明るくなった。
 定員50名ほどのその部屋は、元は講義室だったのだが、目の前に新しい講義棟が建ったので使わなくなったと言うことで、佐竹が『ビデオサークル』の部室として払い下げて貰ったものである。教室の中央には大きなテーブルが置かれており、教室の周囲には机がグルリと並べられている。この机が、物置兼作業台兼収納スペースとして実に機能的に活用されていた。
「昨日はお疲れさん。ちゃんと帰れたかい?」
 昨夜は、そのサークルの新入生歓迎コンパだった。佐竹が尋ねると、ビデオサークルの唯一の新入部員である佐保が「はい」と答えて、中央のテーブルの周りに並べられている椅子を1つ引いて腰を下ろした。
 佐保は小柄で優しげで、女の子のような容姿をしている。肌の色が抜けるように白いところと、長い睫毛で縁取られたぱっちりとした黒目勝ちの目が、どこかサエに似ていた。
「先輩方は、あの後どうなったんですか?」
 佐保の言葉に、佐竹はウハハと笑いながら、先程まで座っていた椅子に腰掛ける。
「慣れたモンさ。タクシー呼んでポイポイと詰めて、高科を乗せてブー」
 ビデオサークルの部員は、新入部員を除くと全部で5名しかいない。部長の佐竹と、4年の高科と丸山と細川、そして3年の須崎だ。飲み会があると、いつも丸山と細川が酔い潰れてしまうので、それを自宅に連れ帰って介抱するのが副部長の高科の役目になっていた。そう言うと、佐竹の言葉に佐保が「押し付けたんですね」と言って苦笑する。
「心外な」
 佐竹は佐保の言葉に眉をヒョイと上げて返すと、「高科家は面倒見がいいんだよ」と付け加えた。実際に、今までも何度も彼らは高科家の厄介になっている。高科が同期だということと、高科の兄が前部長のサエだということで、彼等も行き易いのかもしれなかった。既に卒業してしまったサエに会えるのは、こんな時くらいしか無いからである。残念ながら、佐竹と須崎は大学至近のアパートに住んでいるので高科家の厄介になったことは無い。屋敷に足を踏み入れたのも、4年の時に1度、挨拶に訪れたきりだった。
『バカにするな! 何でもあんたの思い通りになると思ったら大間違いだ!』
 サエの父親にそう啖呵を切って飛び出して来た時のことを思い出し、佐竹は思わず顔をしかめる。しかし、「部長はまっすぐ帰ったんですか?」という新入部員の問い掛けに、すぐにパッと笑顔になると視線を向けた。
「帰った帰った。須崎も俺も、あの店からすぐのアパートなんだ」
 3年の須崎はビデオサークルの看板俳優だ。顔はモデル張りにイイが無愛想で、先輩相手でも全く媚びることが無い。佐竹はいつもこの可愛くない後輩のポーカーフェイスを崩してやりたくて仕方がなかったのだが、しかし昨日は違った。いつもの無愛想はどこへやら、よく喋るしよく笑うし、他の先輩たちとも冗談を言い合っている。その原因がこの可愛い新入部員だと気付いた佐竹が、試しに佐保に自分と付き合ってみないかとチョッカイを掛けてみたところ、たちまち怒った須崎にペコンと飲み屋のメニューで頭を叩かれた。
「酔うとホント見境い無いな、あんたは」
 ハンサムな後輩が、呆れたようにそう言いながら溜息をつく。珍しく年相応になったその顔が再びポーカーフェイスを纏おうとするのを見て、だから佐竹は言ったのだ。
「じゃあさ、1週間やるよ」
 1週間後にもう一度告白するから返事を聞かせて欲しい。それは、佐保に向かって言ってはいたが、須崎を焚き付ける為の挑戦状だった。
 『欲しいものが出来たなら欲しがれ!』
 彼の生い立ちがどんなものだったのかは知らないが、まるで欲しがることが罪悪ででもあるかのように、ビクッと身を竦めて諦めてしまう須崎の性格は、二十歳の若者らしくないと佐竹は常々思っていたからだ。
(それに・・・)
 佐竹はそう考えて、目の前で楽しそうに自分の話を聞いている可愛い後輩をジッと見る。

更新日:2011-01-11 19:37:02

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