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小説

携帯でもPCでも書ける!

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―――― 倉浪の神社

 もう4月だというのに、手足が凍りつきそうなほど冷たい。そして、それを刺すように、向かい風が即座に肌の体温を奪っていく。きっと私は今、酷い顔をしている。
 袖で何度も目を痛いほどこするけれど、なぜか涙は止まってくれない。
 息が既に切れていることなど気に掛けず、私はただゼンのいる河原へ一文字に向かった。
 今頃、気付いた。私はゼンを助ける、など大口をたたいていたが、逆に助けられていたのはずっと私のほうだった、ということに。いつの間にか、あそこが私のかけがえのない“居場所”になっていた、ということに。

「ゼン、いる?」

 風に吹き飛ばされてしまいそうな、小さな声で言葉を紡いだ。

「ゼン……?」
 
 いつもは、ここにいるのに……。

 その時だった。

 ~♪

 聞き覚えのある携帯の着信音が、沈黙を破るように鳴り始めた。
 こんな声じゃ電話になんかでられるはずがない、と躊躇ってもみたが、もしもパシリ関係の連絡だったら、と恐くなり、つい携帯を取り出す。

「……もしもし」

「おめでとうございます!!……あなたのハガキが1位に当選しました」

「……え?」

「えー、東宮薺さん、ですね?」

「はい……」

 そっか……ハガキのこと、すっかり忘れていた……。
 私の胸の中で、期待が膨らむ。

「では、登録された住所宛てに、こちらから当選の証明券を送りいたしましたので、それをお持ちになって倉浪神社に、6時30分までにお越しください。その場で、手続きをさせていただきます」

 ――倉浪神社って……すぐそこだ……!! でも、手続きって一体なんのための……?
 プツッ、と通話が切れ、私は家へ向かうことにした。今になっては行きづらいけど、メールボックスを覗くだけなら大丈夫、と自分に言い聞かせた。

 顔がぐしゃぐしゃになっていることも忘れ、私は歩きだす。

 ――1位、っていってたよね? ……え、でもそれってあり得るの?
 ……ハワイ旅行とかかな? ……もしよかったら、ペット賞と交換してもらえるかな?

 ごちゃごちゃ考えている間に、私はもう家の前へとついていた。
 さっきのことを忘れようと、何も考えないでメールボックスを覗く。

「これだ……」

 そこには、派手に飾られた、金色のカードが入っていた。
 それを手に取ると、急いで神社へと走った。

「やっと、ついた……」

 私は息を再び切らしながら、神社を前にした。
 ――階段、長っ!!!
 ちょっと勘弁、と思ったけれどどうしようもない。私は棒になった足を無理やり動かして、何段も駆けあがった。時間的にはまだ1時間もあるけれど、私が当たった賞品を早く見てみたい。
 気が遠くなりそうになった時、やっと最後の一段を上り切った。

「東宮薺様、ですね?」

 そこにはメガネのよく似合う、スーツを着た女性が立っていた。
 私が疲れきっているのに気を使ってくれているのか、彼女は私が頷いたのをみて、話を進めた。

「では、カードを……」

「あ、はい」

「確かにご確認いたしました」

 私が彼女にカードを手渡すと、彼女は神社を背にほほ笑んだ。



「おめでとうございます。1位に見事当選された貴女への"豪華賞品"は、この神社です」

更新日:2012-01-30 22:48:10