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小説

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―――― そして、動き出す

 
 薺、泣かないの。
 今度遊びに来たときも、またあそこに連れて行ってあげるから。

 薺、この絵本、読んでみる?
 ちょっと難しいかもしれないけどね。

 薺、お母さんには優しくしてあげなきゃダメよ?
 お母さんもきっと、薺のことが大好きだから。

 
 どこからか、優しく懐かしい声が聞こえてくる。

 多分この声の主は、すぐ目の前で眠っているこの人のもの。

 言われてみれば、確かに遠い昔、こんなことを言われたような気がしないでもない。

 そうだ。私があの本を持って帰ってきたときだって、彼女はあれを不思議そうに見ていた。

 彼女の名前だって。全く同じじゃないか。

 何でもっと早く、気付かなかったのだろう。

 バカか、私は。あ、そっか、バカだった。

 じゃあなんで、彼女は倉浪様の封印を解きに行かなかった?

 なんで、私が倉浪神社の話をしたときに、必要以上に反応しなかった?

 さっきの老女の話。
 確か……12年前、って言ってたよな?

 “大介さんも、菫さんの周りをうろついていたあの少女も、みんな命を落としちまったんだ”

 大介さんは確か、伯父さんの名前……。
 だとすると、あの少女、って……。

“特に椿は、本当にすみれさんに懐いていて”

 椿ちゃん、ってこと……?

更新日:2012-01-30 22:49:14