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エンディング

 会議室の床からはい上がってきた巨大ゴキブリに、そこで待っていた巨大ゴキブリが訊いた。

「遅かったな」
「落としたコンタクトレンズを探していたんだ」
「なんだそうか……。で、ストライキの決行は?」

「ああ、10時ジャストにいっせいに……と言いたいところだが、隣のヤツがひとりだけ裏切りやがった。ガサガサと虫みたいな耳障りな音をだして、バタンバタンと壁をたたきながらなにやら主張していたようだけど、なにを言っていたのかはまったく意味不明だね」

「なるほど、そうか。そいつは計画的だな……」
「計画的って、なんのことだ?」
「いやね、隣の星が、軌道をはずしちまったみたいでさ。ひとりだけねじをまわしていたせいだろう」

「まさか」

「ねじまわしの仕事はバランスが大切なんだ。誰もができる仕事じゃない。それは、ねじまわし屋の君がいちばんよく知っていることだろう。

 隣のヤツは、きっと経営者とグルだな。ストライキを利用して、ひとつ星を飛ばそうと計画していたに違いない」

「そんなことするかな」

「オレが経営者だったらするね。ここ何10億年かの間に、あまりに星が増えすぎた。支えるねじが増えれば、それだけ母体の銀河に傷がつく。星のひとつやふたつ飛ぶよりも、そっちのほうがより大変だ」

「そうは言っても、飛ばされた星の住民はたまったもんじゃないだろう」

「隣の星だろう? あれなら気にすることはない。人の住めそうな砂漠はあるが、無人だよ」
「そんなこと、なんでわかるのさ」

「探査機さ。あの星には大昔から、我々と同じ形をした数え切れないほどの小型探査機を送っているからね。どの探査機の眼にも、生き物と呼べるものはなにも映っちゃいない。

 ガサガサと耳障りな風が吹くだけの、なにもない星さ」

- FIN -

更新日:2008-12-27 01:34:44

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