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3.帰路、1㌔(㍍)

-1-
 エレメントを回収した後の洞窟は、こころなしか落ち着いたような雰囲気で満ちていた。
 ふと、壁に横穴ができているのを見つけた。ハカセの言っていた『隠し通路』だろうか。
 入っていくと、突き当たりに小さな空間ができていた。砂地だというのに、蒼い、小さな花がぱらぱらと咲いている。綺麗だ。そしてその花の上に、添えられるように一着の服が置いてあった。
「これは…しょ、消防服!?」そう、消防服が添えられていた。消防服というと、グレーを基調として黄色のラインが入った防火服を思いつくが、これはグレーではなく青色だった。ここに咲く花のような、深い蒼の消防服。
「着ていけってか…?」
 でも、南の島で消防服を着て駆け回ったら、熱中症でぶっ倒れてしまうだろう。
「こーいう時は…」困ったときのM.E.N.U.頼みだな。ボクはM.E.N.U.の画面を見た。画面には[ ITEM RECOVERY ]の表示が。
「これも回収できちゃうんだ…」M.E.N.U.を消防服に近づけると、例のごとく画面内に吸収されていった。画面表示が[ COMPLETE ]に変わる。
「消防服って、お宝なのか…?」
 これも、後で博士に調べてもらう必要がありそうだなぁ…
 来た道を戻っていく。洞窟内、それも南の島に、豚が生息しているのを見かけた。のそのそと歩き、時折鳴き声を上げる。
「しっかし…豚とか羊とか、ここの生態系はどーなって…ん?」ボクは前方に見えた動物を、立ち止まって凝視する。
「あれは…猿…?」
 間違いない。真っ白な毛皮の、小猿だ。ボクに気づくとそいつは、洞窟の奥へと逃げていった。目で追うと、小猿が進んでいった方向は偶然にもボクが来たときとは違う方向だった。
「つか、豚と羊、今度は猿って…この島、何かオカシイだろ…」
 ボクはひとりごちて、猿の向かった方へと進んでいった。
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「…あれ、抜けちゃった」進んでいくと、別の場所から外に出てきてしまった。小猿の姿はない。
 ここは入り江のような形になっていて、波もほとんど来ない。巨大な水溜まりのような海。その入り江の、砂浜から近いところにぷかぷかと何かが浮いていた。よく見ると、瓶が浮いている。中には、手紙のような物が。
近くにあった棒きれを使ってちょっとづつ岸に近づける。手の届くところまで来ると、瓶をひっつかんで、コルクの栓を抜いた。ぽっ、という音がする。

手紙にはこうあった。

『俺はジャン・ピエール・ゼンラー。シェフ・ド・エールの料理人さ。
ここは新鮮な食材も豊富でいい島だ。…たまたま流れ着いただけなんだけどね。
まぁ、余計な事を考えずに料理に集中できる…そんな南の島を『ラ・シェフ・ビーチ』と名付けた。』

下には、簡単な地図が載っていた。手紙にあった島―ラ・シェフ・ビーチを中心に、近くの国が簡略された形で描かれている。地図の下には、島の座標が記されている。
「ハカセに見せてみようかな…」地理が苦手なボクは、M.E.N.U.に回収するとそう言った。
 これ以上寄り道をしていたら、体力が尽きてしまう。ボクは足早にその場を去った。

更新日:2011-01-27 17:51:49

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