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2.Power Point

-1-
 頭の中に、鋭くか細い閃光が走ったような、そんな感覚が伝わった。調子の悪いテレビをたたくように、乱雑で粗暴だが可能性を秘めた衝撃が響く。その度、閃光が通う。そうして三度目には、電極が繋がったように、沈んでいた意識が戻ってきた。
「…っ」
 頭に鈍い痛みを感じ、思わず顔をしかめる。目を開けると、砂浜と海が視界に入った。
「ってー…」
 よろよろと立ち上がり、首を振る。なんとか歩けそうだった。波にもまれてここに流れ着いたからだろうか、鼻がじんじん痛み、右耳は水が溜まり、口の中は塩辛い。海水が、おかまいなしに体に入り込んできていたのだ。
 海の方を振り返ると、辺りに陸は見当たらない。空から降り注ぐ太陽の暖かさは夏を思わせた。海辺に生える木にも、南国フルーツが実っている。ここは、どこか南の孤島ではないか。安直だが、ボクはそう思った。
 一体、あれからどのくらい時間が経ったのか、まるで見当がつかなかった。一日、二日…もしくは数時間程度か。時間はどうあれ、行動を起こさないとどうしようもない気がした。
 ふと、とても大きな岩場が目に入った。よくみると、人が一人通れるくらいの穴が空いている。いわゆる洞窟だ。誰か人がいるかもしれない。
 行ってみるか、と一人ごちて、ボクは洞窟の中へと歩みを進めた。
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 洞窟内は、天井にぽっかりとおおきな穴が空いていたので、暗くなかった。数十メートル先に、入ってきたところと同じような穴が空いている。人工的でないとしたら、かなり器用に風雨に削られてできたものと思われる。
 「…なんだあれ」
 数メートル先に、妙な生き物がいる。最初は太い植物の茎かと思ったが、どうやら動いている。よく見ると、地面から体を半分だけ出して直立状態にあるイモムシだった。ただ、普通のイモムシと比べて、デカい。ものすごくデカい。体の周囲はバスケットボールくらいはあって、背丈…というより長さは1.5mくらい。
 イモムシがデカくなったところで、人を襲うとは思えない。ボクはその場を素通りしようとしたが、近くに来た途端、そいつはボクにヘッドバットを喰らわせた。
「てっ!―何すんだよ!!」
 振り返って怒鳴っても返事もなく、その代わりに二発目が飛んできた。ボクは体をひねって避けると、お返しに一撃、図太い体にパンチをキメた。相当効いたのか、イモムシはその場にへばって、動かなくなってしまった。
 今はこいつを倒すのが目的ではない。向こうにある出口へ向かわなくては。ボクは再び、歩き始めた。潮の流れる音がこだましている。この島、バカンスとかで行くんであればもっと楽しかっただろうに。あいにく今は遭難者だ。耳を傾け、ゆったりとしているほど余裕はない。
 出口の穴をくぐると、そこは小さな入り江のようになっていて、そしてその入り江に横付けするような形で泊まっていたのは―
「海賊…船…?」
 まさしく、海賊船であった。しっかりとした木で組まれた、映画に出てきそうな立派な船だ。鉄で枠を補強された、木製のスロープが砂浜に延びている。果たして入ってみるべきだろうか、と考えながら上を見ると、太い柱に支えられる帆とマストが見えた。真っ黒の帆には、白いドットで丸メガネがプリントされている。どこかで見た覚えのあるデザインだった。
「…あっ! ハカセっ!」
 思わずそう言っていた。そうだ、あの人のメガネに似ている。―ということは、中にいるのかもしれない。墜落した宇宙船がどうやって海賊船になるのかは分からないが、行ってみる価値はある。ボクはスロープに足をかけた。

更新日:2011-01-05 11:36:22

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