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1.parting and meeting

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 混沌とした眠りから目覚めると、そこは公園だった。
 昼寝をしていたら、思ったより長いこと寝ていたらしい。ボクの寝ていたベンチの少し後方にひろがる池の水面には、夕焼けが浮かび、橙と紺の空が小競り合いをしている姿が揺らいでいた。もう夕暮れ時だ。
 妙な夢を見たものだ―。そう思いベンチから起きあがり空を見上げると、夜の制圧した漆黒の空間が広がっていた。毎日のように、ここでこうして空を見ているが、何の変化もない。日常も同じだ。ボクはほぼ毎日、学校を休んでいる。授業はつまらない、友達は頭が悪くて、逆に話についていけない。そういった理由から、ボクは学校をサボり、一日をその辺で過ごす。家に閉じこもって過ごす時もあるが、ここ最近は一日を外で過ごし、夜更けに寝るためだけに帰る日が続いている。ワケあり、だ。
 今日はどこで夕飯をすませるかな、と考えていたその時、代わり映えのしない紺の空に、二つの光が宙を駆けるのを見た。前方を行く鮮やかな黄緑の光を追うように、炎に似た赤色の光が、一列になって飛んでいく。
 変わった流れ星か、もしくは墜落する衛星か何かだろうかなんて思っていると、赤の光から緑の光へ向けて、閃光が走った。それを受けた緑の光が一瞬、小さく瞬いたかと思うと、そこから同じ色の小さな光が雫のように空から落ちるのが見えた。そして、空を下る碧の雫が落下した地点は―
 ボクの目の前、数メートル先だった。思わず立ち上がり、駆け寄る。
 雫の正体は、石だった。高さ30cmくらいはある、縦に長い八角形型の大きな、エメラルドのような石。こんな物体があるだけででも十分不思議かつ非現実的だが、加えてこれは空を駆ける光から産み落とされ、ボクの目の前に音も立てず宙に浮いて静止しているというのだから、もしやこれも夢なのかとボクは疑ってしまった。
 そっと、指でつついてみる。が、触れる寸前で、手が逸れていってしまう。厳しくも物腰柔らかな紳士さながらに、ボクの手を退ける。一体、これは何なのだろう。思っていると、さらに不思議で非現実的な事が起こった。
 ヒューン、という、甲高いジェット音が聞こえた。今度は何だ、と思いつつ音のする方を見ると、公園の開けたスペースに妙な形の乗り物が今まさに着陸せんとするところだった。
 それは白く塗装された、平たい六角形型の宇宙船だった。突然現れたその乗り物は、機体下部から吹き出るジェットの出力を抑え、代わりに細い足を伸ばして器用に着陸した。次いで、機体側面の壁が地面に向かって縦に開き、そのまま搭乗時のスロープになった。そこから、人が降りてくる。
 降りてきた男の背は低く、純白の白衣に身を包み、丸顔に丸眼鏡をかけ、見事に禿げた頭頂部の両脇には、添えるようにボサボサの白髪が生えている。そう、なんというか―博士のような風貌であった。絵に描いたような博士の姿をしている。
「それに触れてはいかん! 返してもらうぞ」と、その男は言った。そして、その小柄な体躯からは想像できないほど素早く石の元へ駆けつけると、それを平然とつかんで持ち上げた。
 空から、先ほどより尖った響きのジェット音が聞こえた。空を見ると、先ほどの赤い光がこちらに向かっているのが見えた。先ほどの老人は「危ない! とにかくこれに乗るんじゃ!」と言うと、宇宙船にむけて走り出した。ボクも、それに続く。
 船内に駆け込むと同時に、後ろで「ぷしゅぅん」と音を立てて扉の閉まる音がした。振り返ると、ボクの知っている見慣れた公園はもう見えなかった。

更新日:2010-12-31 16:39:42

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