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4.Act Reason

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 風呂から上がって、窓の外を見た。日が傾き、綺麗な夕焼けが水平線に沈みかけている。くしゃみをするまで、ボクはぼうっとその景色を見ていた。
 日差しの照りつける南の島で動き回っただけあって、部屋に戻ると同時に疲労感と汗が一気に出てきた。風呂に入ったおかげですっきりした。
 ふと、ひどく家庭的な問題に気が付いた。着替え、どーしよう。いつまでも同じパンツってのはごめんだ。ジーンズは別に大丈夫だけど。下に着る肌着も、新しいのがないと困る。
 腰にタオルを巻いたまま、ボクはハカセのラボに向かった。
「ハッ、何でありますかセンチョー」
「センチョーはわかったから。…着替えって、ない…かな?」
「センチョーがそう言うであろうと思い、着替えを予め用意させて頂きました!」
「え、マジで?」無人島でどーやってパンツ手に入れたの? ボクが疑問に思っていると、ハカセがいつもの口調に戻って答えてくれた。
「エレメントはな、あらゆる元素・エネルギーに高効率変換できる強大なエネルギー資源なのじゃよ」
 あらゆる元素とエネルギーって…それって、エレメントがあれば何でも作れるってことじゃないの?
「ってことは、ボクが回収したエレメントの一部を使って、パンツと肌着を?」
「そうじゃ」
「もったいなくない?」だって単純な話、純金を大量に錬成すれば大金持ちになれちゃう、ってことだろ…?
「全然。日用品なんかを作るのに必要なエレメントは、あまりに微量でほとんど消費しないようなもんじゃ」
「で、でも使ってるんでしょ?」
「うむ。粒子レベル程度じゃが…」
「りゅ、粒子レベルって…」
 水の入った未開封のペットボトルから中身が漏れることはないが、あのボトルにも非常に小さな穴が開いているという話を昔テレビで見た。その穴の大きさが、粒子レベル。目には見えず、手で感じ取れず、液体も通さない。せいぜい通るのは、わずかな量の空気がそこから出入りするくらいなのだという。だから、密閉されたペットボトルの中身にも賞味期限が定められているわけだ。それほどの微細な量で、日用品を揃えられてしまう。あの石は結構、ヤバい代物なのだろう。
「…という感じじゃ。チェリー、聞いてた?」ハカセがボクの顔をのぞき込む。何か話していたようだったが、一人で長い説明をしていたボクの耳には何も入っていなかった。
「…ゴメン、もう一回言って」
 ハカセが話したことは、ボクがさり気なく疑問に思っていたことの解答そのものだった。
 粒子レベルの消耗で日用品が生成できてしまうほど強大なエネルギー鉱石、エレメント。それが先日の攻撃で、ラボからこの惑星のあちこちに散り散りになってしまったのだ。すさまじい力を持つ未知のエネルギー体が突然、惑星のあちこちに出現したのだから当然、そのあふれ出るパワーのおかげで、落下地点の周辺地域では生態系に以上が出始め、その結果として南の島に豚や羊が野生し、チェリーが倒したようなイモムシの怪物などが生まれてしまったのだ。

更新日:2011-01-13 18:03:03

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