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0.ファースト コンタクト

―ボクはいつか、キミに出会う。
One day, You will be find me.

-1-
 見渡す限り、真っ暗だった。でも、自分の姿だけははっきり見える。身につけているお気に入りのスニーカーもジーンズもスウェットジャージも、その表面だけ照らされているかのようだった。
 ふと前を見ると、はっきり見えるのは自分だけではないことに気づいた。前方から、こっちへ向かって女の子が歩いてくる。ボクも前へ歩き出す。
 ボクと彼女がすれ違ったその刹那、女の子は無邪気な笑い声と共に闇に溶け、消えてしまった。そしてほぼ同時に、さっきの女の子が、絵に描いた幽霊のように半透明の姿で、宙に浮かび上がった。一人じゃない。同じ女の子が、何人も、直立したまま宙を飛び交っている。
 ボクの左前方、半透明でない…そう、実体と言うべきか、そこにも女の子が立っていた。
 ボクは彼女に歩み寄る。近づいて、体が触れた瞬間に女の子は無邪気な笑い声と共に消えてしまう。驚いて振り返ると、また別の場所に女の子がいる。そうして、何度か同じことを繰り返すうち、気がつくと周りの風景が変わっていった。漆黒だった世界に、色とりどりのストライプが走る。じきに、また風景が変わった。
 様々な植物が植えられた、美しいバルコニーだった。その中を、彼女は駆けていく。ボクは追いかけ、服をつかんで引き寄せると、すかさず彼女を殴った。
 鈍い音が響くと「ねぇ」と彼女は言った。魂の籠もっていない、ただ声帯を震わせただけの声。それに加えて、殴ったはずだのに痛みを感じていない様子を見たボクは、この子は果たして生きているのかどうかが分からなくなってきた。その状況に混乱し、力の抜けたボクに彼女は無表情のまま「もっと遊んで」と続けた。ますますわけがわからない。
「あなたはチェリーでしょ?」
何故、知っているのだ。もっといえば、ボクは何でキミを殴ったんだ。それが遊びだというのか。ここは何処なんだ。そして、君は誰なんだ。
「違うのかな?」
彼女は、ボクを真っ直ぐ見つめ、もう一度問いかけた。よくみると、綺麗な目をした美少女だったが、今のボクは、とてもじゃないがときめいていられるような気分ではなかった。
「ボクは、チェリーだ」
 答えた瞬間、目の前が真っ暗になった。夢から現実へと意識が転換する直前、彼女の無邪気な笑い声が頭に響いた。

更新日:2010-12-30 11:59:38

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