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リラっ子

リラっ子

 次の日も、二人で肥料を撒いた。

「後は、雑草がはびこらないように気を付けるんだって。
 除草剤はあまり好ましくないって」
「お隣さんが除草剤を撒いたら、作物も枯れたって言ってたね」
と、トミーは笑った。

「でも、奥さん、言ってたけど、とても手間なんですって。

 ね、あの木はなんと言う名前?
 初めに耕す時、残したじゃない?
 名前あるんでしょ。
 あの白い小さな花が一杯付いている背の低い木」
「リラだ」
 トミーは変な目つきでサチスを見ながら答えた。

 リラはライラックとも言う。
 この花を現場に残すので、トミーのセカンドネームになっている。
 
 サチスは機械から降りて、その木の近くには、スコップで肥料を撒いた。

 サチスの足元から、小さな蛇が慌てて逃げて行った。
 何気なく蛇が出て来た木の根元を見た。
 そこに、赤いつぶらな目が覗いていた。
 すぐに白い鼻面も現れ、丸い左右の耳を振りながら、蛇の去った方を覗いている。

 目を上げて、サチスに気が付くと、慌てて穴の中に消えた。
 ちらっと丸い尾が揺れた。

 這いつくばるようにして覗き込むと、
どうやら二匹居て、寄り添って震えているようだ。

更新日:2010-12-29 15:34:44

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