官能小説

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かすかな不安

喜美子が正幸から旅行に行こうと誘われた時、すでにその予感があった。
それは母と子と言う、切っても切れない血の繋がりから来るものだろうか?
それとも、喜美子自身の中に眠る、女としての血が知らせたのかは判らない。
夫を突然脳溢血と言う病で失い、50代で未亡人となった。
生前は、夫と共に良く旅行に出たものだが、未亡人となり、その機会も失われた。
そんな時、独身の25才になる息子が、父に代わって喜美子を旅行に連れて行くというのだ。
その話が出た時、正直なところ、喜美子は迷っていた。
何故なら、最近正幸の喜美子を見る目に、何故か息子以外の存在を強く感じたからだ。
夫が生きている頃には決して見せた事の無い、熱い視線を感じる事が有る。
それは、喜美子を母親として見ている目では無く、一人の女を見る目だ。
もしかしたら、それは喜美子の思い違いかもしれないが、そんな迷いもあって、息子との接し方に躊躇いを感じていた。
そんな矢先に、突然の旅行の誘いであった。
断る理由は、今の状況の中には存在しない。
だが、家の中での正幸の行動を考えて見ると、思い当たる事は多々有る。
入浴中、覗かれている気配を感じた事もあるし、汚れもの用の籠に入れておいた下着が無くなっていた事も・・。
だが、それに対する確証はなく、全て喜美子の思い過ごしの様でもある。
息子の真の狙いが何か、それが判るまでは、喜美子の不安は拭えなかった。
直接言われた事も無く、迫られた事も無い。
だが喜美子は、女としてそれを感じ取っていた。
正幸が、夫を失った母の喜美子を、女として見ている事を。

正幸の真意を知りたくて、喜美子は旅行の誘いを受けた。
怖い気もしたが、避けていては何も始まらない。
この先も、母と子と言う絆は永遠に続くのだ。
避けていては、母と言う立場が判らなくなる。
この身をかけてでも、母の務めは果たさなければならない。
それが喜美子の決意でも有った。

更新日:2010-12-07 19:23:54

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