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5 夕方、境内。

   すっかり日が暮れていて、赤い日が社全体を照らしている。
   子供達は息を上げている。
   一方で稲荷様は子供達の前で腰に手を当てて、
稲荷様「人間って奴はすぐへばるんだな。まだまだ鍛え方が足りないぞ」
   と、にやりとする。
   子供3は稲荷様を見て、
子供3「何で……そんなに化けられるんだ……?」
   と、途切れ途切れに声に出す。
   稲荷様は子供達の前に来て、
稲荷様「そりゃ、混じりっけがないからな」
   と、満足気味に言い、
稲荷様「どうした、鬼ごっこは終わりか?」
   と、尋ねる。
   子供2はへろへろになりながら稲荷様に近づく。
   そして、稲荷様の裾に手を触れる。
   稲荷様はにこりとして子供2の手を引っ張る。
   子供2は焦り、
子供2「え……?」
   と、困惑の声を上げる。
   稲荷様は子供2を引き寄せ、にこりとして、
稲荷様「今日は楽しかったぞ」
   と言う。
   子供2は稲荷様を見て、ふっと笑みを浮かべる。
   稲荷様は空を見る。
   すっかり暗くなっている。
   稲荷様は子供2を離し、
稲荷様「だが、もう日が暮れるぞ。お前ら帰らなくて良いのか?」
   と、尋ねる。
   子供達は空を見て焦り、
子供1「まずい、もうこんなんだ」
   と言い、急いで境内を出て行く。
   子供3は稲荷様を見て、
子供3「じゃあな、てめえまた捕まえに来るからな!」
   と言って踵を返す。
   子供2はきょとんとした表情で稲荷様を見て、
子供2「ばいばい」
   と言って去っていく。
   稲荷様は子供達が去るのを見て、ふうと一息ついて拝殿に向かう。
   そこに、
神主「何だ、子供と遊んでいたのか」
   と、声が響く。
   稲荷様は立ち止まり、声がした方を向く。
   そこには神主が歩いていて、稲荷様に近づいている。
   そして、稲荷様の前に来て立ち止まる。
   稲荷様は眉間にしわを寄せ、
稲荷様「もう結界を外すのか?」
   と、尋ねる。
   神主は首を振り、
神主「……反省の色は見えんか」
   と、淡々と言って咳き込む。
   稲荷様はむっとして
稲荷様「脅かすだけが化ける目的じゃねえ。体弱ってんだから大人しく寝てろよ」
   と言い張る。
   稲荷様が拝殿の前で手をかざすと、拝殿の戸が開く。
   稲荷様はつかつかと拝殿の中に入る。
   拝殿の扉が、ぴしゃんと音を立ててしまる。
   神主はじっと拝殿を見て、
神主「その考え……只の強がりならいいがな」
   と言い、踵を返す。

更新日:2010-11-24 21:50:28

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