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4 昼過ぎ、境内。

   木々が風でそよいでいる。
   稲荷様は拝殿の屋根で昼寝をしている。
   風の感触で耳をぴくぴくさせると、目を覚まして境内を見下ろす。
   境内から見える郊外は、余り高くない建物が並び木々が所々に生えている光景がある。
   境内には2、3人の子供達が遊びに来ている。
   稲荷様はその様子を見て、にやりとして拝殿をぴょんと降りる。
   子供達は何やら話をしていて盛り上がっている。
   そこに、子供達の後ろから、
稲荷様「ねえねえ、ちょっとこっち見てよ」
   と、軽い調子の声が響く。
   子供達は何だと思い、振り返る。
   すると、そこには緑色をした、顔が崩れかけている化け物の姿がある。
   子供1と子供2は驚くも、子供3がふと腰から狐の尻尾が出ているのに気づく。
   そして、
子供3「こいつ、尻尾があるぞ!」
   と、恐怖紛れに声を出す。
   化け物ははっとなり、腰を見る。
   腰には尻尾が生えている。
   子供2と子供1は途端に恐怖が萎え、
子供1「おい、狐が化けているのか?まさかなぁ」
   と、尋ねる。
   子供2は化け物に、
子供2「ねえ、狐なの?」
   と、素直に尋ねる。
   化け物はむっとし、体から煙を発する。
   煙は全体を包み込み、子供達は咳き込む。
   煙が消えると、そこには化け物ではなく稲荷様が立っている。
   稲荷様は子供達を見て、
稲荷様「ち、皆すぐビビるから大丈夫だと思ったのによ」
   とぼやく。
   子供達は、稲荷様を見て驚く。
   子供2は恐る恐る稲荷様に近づき、
子供2「あ、本当に……狐だ」
   と言う。
   稲荷様は得意げに自分の胸を叩き、
稲荷様「狐は狐でも、この神社の神使様稲荷様だ!」
   と、得意げに言う。
   子供1はぽかんとして、
子供1「しんし……?よく分からないけど変な人じゃないよな?」
   と、尋ねる。
   子供3は子供1に、
子供3「格好からして変だろ。変な人に関わるなって学校で言われなかった?」
   と言う。
   子供2は頷く。
子供3「じゃあ行こうぜ」
   と言い、稲荷様を無視してさっさと先へ向かう。
   稲荷様は自分が無視された事に怒り、
稲荷様「おいまてや」
   と言う。
   子供達は何だと思い、振り返る。
   子供3めがけてサッカーボールが飛んでくる。
   子供3は顔面にサッカーボールが直撃し、倒れる。
   子供2と子供1は倒れた子供3に駆け寄る。
   子供1は稲荷様がいたほうを向き、咄嗟に、
子供1「おい、何する……」
   と声を上げるも、そこには稲荷様の姿はない。
   子供1はきょとんとする。
   サッカーボールが転がり、子供達の前で止まる。
   そして煙が噴出し、煙の中から稲荷様が現れる。
   稲荷様は得意げになって、
稲荷様「ふんだ、お前ら人間如きが人を無視するとは、いい度胸じゃないか」
   と言い張る。
   子供3は痛みで顔をさすりながら起き上がると、怒りで、
子供3「てめえ!」
   と言い、稲荷様を掴もうとする。
   しかし、稲荷様は瞬時に虫に化ける。
   子供3は勢いの余り転ぶ。
   虫になった稲荷様は子供達の隣に飛んで行き、すぐ元の稲荷様に戻る。
   稲荷様は、転んだ子供3を見て笑い出し、
稲荷様「まっすぐ突っ込もうとするからそうなるんだ。少しは頭考えろ」
   と、満面の笑みで言う。
   子供3は起き上がり稲荷様を見て、
子供3「そいつを捕まえろ!」
   と声を上げる。
   子供2と子供1は稲荷様を捕まえようとするも、稲荷様はいない。
稲荷様「おいおい、反応鈍いんじゃないのか?」
   と、声が響く。
   子供達は声がした方に眼をやる。
   木の上に止まっている小鳥が1羽いる。
小鳥「お前ら捕まえてみな」
   と声を上げて逃げていく。
   子供達は一斉に、
子供達「待て!」
   と声を上げて追いかけていく。

更新日:2010-11-24 21:49:30

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