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距離

浴室出たら
タオルが置いてあった

新に泣き声
聞かれたかもしれない
でも、新は
何も言わなかった


借りた服は
僕には少し大きくて
新らしい
パンチのある服だった


新は
すっと僕に近づいた
昨日のリーダーを
思い出した
二人っきりで
こんなに顔を近付けても
昨日みたいな
感覚にならないのは
当たり前なんだろうけど
不思議だった
人を好きになるって
凄いなって思った

だいぶ腫れ
治まったね
これで会えるじゃん

新は、普通に
さらりと言ったけど
言葉がリピートしてた
泣いた原因が
リーダーだって
新は分かってるみたいだった

車の中で
新は、音楽ガンガンかけて
口ずさんでた
僕に気を使ってか
話しかけてこなかった


テレビ局着いて
車から降りたら
少し具合悪くなった
会うと思ったら
どうしていいか
わからなくなった

落ち着こうと思って
大きく深呼吸した

何もなかったようにしよう
そう決めた

リーダーもきっと
そうする気がしたから


新の少し後を
ゆっくり歩いた
通り過ぎる
スタッフや芸能人に
挨拶しながら
心臓はバクバクしてた


急に新が止まったから
僕はぶつかった

何、どうしたの?

そう言いながら
前を見たら
控え室の所に
リーダーが立ってた
まるで誰かを
待ってるみたいに
キリッとした顔で
ドラマみたいに
いつものリーダーは
そこにいなかった

僕らに気付いて
リーダーは歩いてくる
急に怖くなった


俺、飲み物買ってくるわ


クルッて向き変えて
走り出した
らしくないよね
逃げたんだ
本当にらしくなかった


そんな僕を
追いかけようとした
リーダーに気付いて
新は
肩をグイって掴んで
止めた

リーダー
ちょっとさ、
打ち合わせ付き合ってよ
たまにはさ

え?

リーダーは
戸惑いながらも
新に付いていった

新は
何かを察したんだ
素早かった
僕は、それに
救われたんだ


二人にならないように
僕は必死だった
こんなに
楽しそうに笑ってても
心は空っぽだった
ずっと新の隣にいた
今だけは
甘えさせてもらった

更新日:2011-01-13 00:18:07

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