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万集の秋をあと数日で迎える前のある日のこと、ここ姶昏(あいぐれ)町で一つの骨董屋が佇んでいる。
外から見ればただのぼろい一つの家にみえるものもあれば、それに惹かれて立ち寄ってみようと思う人など様々であった。

「・・・タバコ、在庫切れか。」

残念と後悔の念をこめたため息と今吸っているタバコの煙を噴出す骨董屋の主。
その外見はタバコを吸うというに似つかわしくない外見で、所見の人からみればただの少女であろう。
ただ一つ大人びて見えるのは長い髪の色彩が白だからだろうか。
そんな少女がため息を吐くのは、タバコという一つの癖の問題だからだ。

「癖とはいえ参ったな、これでは癖を通り越して依存症レベルじゃないか。・・・まいったな、お金で買える問題ではないし。うーむ。・・・今月は赤字だな。」

そう考えている間にもその問題の煙草は熱で無常にも溶けてぽろぽろと落ちていく。
タバコがいつ切れるかは火を見ることより明らかであった。

「・・・これを機に禁煙でもするか。たしか今まで吸った2倍は耐えなくちゃいけないんだったか。」

実際に言ってみると恐ろしい時間がかかるのはとても明白であった
いままで生きた年数以上とまではいかないが100年単位は結構長い、普通ならクリアするまえに寿命で死んでるレベルだ。
もう数えるのも禁煙するのもめんどくさくなってくるのは正常な反応であろう。
そして禁煙の決意などすぐに忘れるのも正常な反応であろう。

「・・・お客人のようだな。」

この言葉を待っていたかのようなタイミングで古い扉は悲鳴をあげてピンポンのように知らせる。
古びた扉があけずらいためか力をこめず持ち上げるように移動させる、そんなことをするのに似つかわしくないお客人がそこにはいた。

「お邪魔させてもらおう。良き品を持ってきたぞ店主。」

渋い口調の少女が良き品を持っていない姿で立っていた。
こいつは不気味なぐらいに骨董屋に品々を預けにくる、あげるのではなく預けるのだ。だが実際預ける言葉の扱い方をしてないからなんともいえないのだが。
そうだという返答の変わりにその例の品を体をゆがめて取り出す、どうやら古く錆びた剣のようだ。

「これだ、なんでもここ日本の神剣だといわれた。貴様に見せればなにかわかると思ってな。」
「私ら冗談を言う年ではないだろう。まぁ少し見せてみろ。」

そういって年季の入った品を受け取る。
なるほど、確かに間違いではないようだ。これは私より年月の入った剣。
さしずめ神話の話もウソではない、緋緋色金(ひひいろかね)を使っているあたり古事記にあったものだろう。緋緋色金など今の現代生まれてから探しても見つからないほうがあたりまえの品なのだ。
こんな昔の剣など一種のオーパーツの扱いであろう、売れば高値以上のものだ。

「大体わかった。そして、神話の剣というのもウソではない。それでこれをどうするのだ、私に鑑定してそれで終わりというわけではなかろう。」
「察しがよいな、いつもとかわらん。これを貴様に授ける。お金もいらない、ただ預かっていてくれ。」
「なんだ、いつもだな。・・・好きに使わせてもらうがそれでいいか。」
「うぬ。むしろそうしてくれたほうがいい。・・・用事はそれだけだ。」

見せにきたと思えば今度は預けてといいすきに使うといえばそれでいいという少し疑問に浮かぶが、まぁいつもどおり好きにさせてもらおう。
だが、遠出をしてきたのであろうふらふらな足つきをしていた、そんな状態で出そうとするのは私の性分ではない。

「まぁまて。なにも早くする用事などないのだろう、茶ぐらい出すから少し座れ。」
「・・・そうだな。用事といえばさっき終わったのだ、なら少し、茶でも出させてもらおうか。」
「そうだ、人の好意は素直に受け取っておけ、私のように孤独を愛しては人生うまくいかないぞ。」

更新日:2010-10-30 11:16:09

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