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この海はよく来る。
地元に戻ってきてから、散歩がてらに毎日寄っていた。

理由・・・海は繋がっているから・・・。
どこにいても・・・手を伸ばせば・・届くかもしれない距離に・・。

なんて・・やっぱりまだ引きずってるのかな・・・。

ここに来ていたらいつか会えるかもしれない・・・なんて、妄想もいいところ・・・。
オーストラリアのチャンミンと出会ったあの海と、今私がいるこの海は・・・全く違う。
似ても似つかない・・・。

そして、こんなところに来るはずもない。
分かってるのに・・・何故か期待してしまう私。

ふと現れるんじゃないかって・・・。

少女マンガのように・・・ドラマのように・・・

『ごめん、待たせたね?』って・・・。

本当は、3人で暮らせたら・・どれだけ幸せなんだろうか・・・。

チャンミンと、私と、まだ名前のないこの子・・・。
チャンミンがパパだったら、どんな顔をして、この子を迎えてくれるんだろう。
どんな温かい手でこの子を抱き上げてくれるんだろう・・・。

この子はどんな顔でパパを見るんだろう・・・

今まで強がっていた気持ちがドンドン溢れてくる。
考えないようにしていたことが、全部溢れてくる。

これでもかってくらいに・・・。

「おねぇちゃん?どうしたの?」
突然、泣いていた私に問いかける男の子が目の前に現れた。
年齢は・・・5才くらいだろうか・・・。

そう言って、ずっと何も言わずに泣いたままの私の頭をずっと撫でてくれた。
いつか、チャンミンがそうしてくれたように・・・。

どれくらい・・・そうしていただろうか・・・。
男の子も私も何も喋らず、ずっとそうしていた。

「涼太~!!!どこにいるの?帰るよぉーー!!」

「あ・・・僕、行かなきゃ。お母さんが呼んでる・・・。」

「あ、うん・・・」
この5歳の涼太君に頭を撫でられていたことなんてすっかり忘れていた。

「おねぇちゃん?何で泣いていたか分からないけど・・・お願い・・泣かないで?僕のために・・・ずっと笑っていて?」
その言葉にハッとした。

何?この子・・まるでチャンミンが私にそう言っているようだった。

涼太君は、私にその言葉だけ残して・・この場から去って行ってしまった。

更新日:2010-09-20 02:11:00

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【東方神起小説】もうここにはいない-続編-