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「今朝方のことだ。俺は、いつものように家を出る前にテレビのニュースの占いコーナーを見ていた」
「ちょっと待って。あんた、確か科学部だったよね?」
「それがどうかしたか?」
思わず遮ってしまったが、黒田はむっとしたように微かに眉を寄せた。
「占い、信じてるの?」
「悪いのか? 科学で全ての事象が説明できると断言するほど、俺は傲慢ではない。勿論、将来的にそうなるように努力するのは当然のことだが、現実を認識できない科学者は科学者として致命的な欠陥が」
「ああうん、判った。ごめん、続けて」
黒田は、時折こうして酷く芝居がかった喋り方をする。それはそれで面白いが、話が横道に逸れることが多々あった。
強引に軌道修正を促したのが効いたのか、少年は一つ頷いて話を戻した。
「それで、今日の占いの結果だが。とてつもなく、凄まじく、常識外れに悪かったのだ。恋愛運・仕事運・金運の全てが最悪だった」
「それは……、ご愁傷様」
まがりなりにも人気商売のテレビ番組でそんな結果を出すなよ、と和美は心の中でツッこんだが、とりあえず口では黒田を慰めておく。
「それで、今日は落ちこんでるの?」
「いや、それだけじゃない。占いには、まだ救いがあった。ラッキーアイテムがローズヒップティーだというんだ。ラッキーアイテムというからには、それを持ってさえいれば悪運が避けられるに違いない。だから俺は、家から学校までの間にある全てのコンビニに入って、そのローズヒップティーを探していた」
「……あったの?」
あのブームって結構前だったよなぁ、いや、そもそも商品化されてたっけ? などと思いながら、和美は一応尋ねてみた。
その時のことを思い出して気が昂ぶったのか、黒田はぎっ、と少女を睨みつける。
「いいや。訪ねるコンビニには、ことごとく、唯の一本たりとローズヒップティーが置いてなかったのだ! 悪運を打破するためのラッキーアイテムが手に入らないなんて、これぞ不幸そのものだと言って間違いあるまい!」
勢いのままに叫ぶ黒田に、流石に教室中の視線が集まる。
「……黒田。あんたって」
その中央で、和美はしみじみと黒田に告げた。
「本当に幸せな人だよねぇ」
そしてその後次のチャイムが鳴るまで、彼女は、何が幸せだ俺はこんなに不幸だというのに、と喚き続ける少年を完全に黙殺した。
「ちょっと待って。あんた、確か科学部だったよね?」
「それがどうかしたか?」
思わず遮ってしまったが、黒田はむっとしたように微かに眉を寄せた。
「占い、信じてるの?」
「悪いのか? 科学で全ての事象が説明できると断言するほど、俺は傲慢ではない。勿論、将来的にそうなるように努力するのは当然のことだが、現実を認識できない科学者は科学者として致命的な欠陥が」
「ああうん、判った。ごめん、続けて」
黒田は、時折こうして酷く芝居がかった喋り方をする。それはそれで面白いが、話が横道に逸れることが多々あった。
強引に軌道修正を促したのが効いたのか、少年は一つ頷いて話を戻した。
「それで、今日の占いの結果だが。とてつもなく、凄まじく、常識外れに悪かったのだ。恋愛運・仕事運・金運の全てが最悪だった」
「それは……、ご愁傷様」
まがりなりにも人気商売のテレビ番組でそんな結果を出すなよ、と和美は心の中でツッこんだが、とりあえず口では黒田を慰めておく。
「それで、今日は落ちこんでるの?」
「いや、それだけじゃない。占いには、まだ救いがあった。ラッキーアイテムがローズヒップティーだというんだ。ラッキーアイテムというからには、それを持ってさえいれば悪運が避けられるに違いない。だから俺は、家から学校までの間にある全てのコンビニに入って、そのローズヒップティーを探していた」
「……あったの?」
あのブームって結構前だったよなぁ、いや、そもそも商品化されてたっけ? などと思いながら、和美は一応尋ねてみた。
その時のことを思い出して気が昂ぶったのか、黒田はぎっ、と少女を睨みつける。
「いいや。訪ねるコンビニには、ことごとく、唯の一本たりとローズヒップティーが置いてなかったのだ! 悪運を打破するためのラッキーアイテムが手に入らないなんて、これぞ不幸そのものだと言って間違いあるまい!」
勢いのままに叫ぶ黒田に、流石に教室中の視線が集まる。
「……黒田。あんたって」
その中央で、和美はしみじみと黒田に告げた。
「本当に幸せな人だよねぇ」
そしてその後次のチャイムが鳴るまで、彼女は、何が幸せだ俺はこんなに不幸だというのに、と喚き続ける少年を完全に黙殺した。
更新日:2008-12-21 21:05:59