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三話

 私立草縁学園。それが俺達兄妹が通っている学校。小中高一貫制で、名前の通り校舎の周りは自然に囲まれており、中のほとんどは広大な庭に覆われている。
 日本でも一・二を争う程凄まじく広く、校舎はそれぞれ南の校門から北(高等部)・東(中等部)・西(初等部)に分かれて造られた。
 おかげで、毎日通うたびに苦労している。
 
「おっ、やっときたか」

「つ、疲れた……」

 教室で高村とばっちし合流。

「もういやだ。なんで朝からこんな目にあわにゃあならんのだ」

「お前……毎回教室で同じこと言うよな」

「……はっ……くぅ……ふんぬぅ……ふ~~」

 高村がニヤニヤと殺意の湧いてくる笑みを浮かべてくるので、殴りかかりそうになった右手をぎりぎりで抑える。
 
「そんで? どうなったんだ?」

「……まあ、なんとかなっ――」

「はよ~!」

「――ぐわぁ!!」

 突如後頭部に重い衝撃が走る。
 頭をさすりながら勢いよく振り向くと、そこには長い髪を一つに結ったポニーテールの少女が、特徴的な真っ白い歯をのぞかせながら、ニシシッとまるでいたずらをした子供のように笑っていた。
 足を下ろす瞬間が見える。どうやらかかと落としを放ったようだ。
 
「断罪の一撃だ」

「なんの!?」

 これは突っ込まずにはいられない。なんで普通に友人と喋っている所でそんな一撃をもらわなきゃいけないの?

「高村はよ~!」

「おう、羽瀬(はねせ)。お前は相変わらず騒がしいな」

「ねえ! だからなんの!? ちょっ、聞いてる? おーいもしもーし?」

「うるせぇだまれ喋るな喚くな呼吸をするな」

 あっ……訂正、こいつは友達じゃないや。

「輝也輝也! あと何日で過労死するの? 冷たくなっても化けて出ないでね?」

 となりでは小学校からの幼馴染が、意地でも生きてたくなるような事を言ってくる。

「お前ら死ねこのバーカ!!」

 キーンコーンカーンコーン

 朝のホームルームが始まった。

更新日:2010-09-08 19:16:16

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