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ヴィアーネ王国と姫
「トール・ヒラカワ、そなたの功績を称え、ここに勲章を授けよう」
「あ、ありがとうございます」
攫われた人助けてそれぞれの住んでる場所に届け終わり、一旦ディアナに戻ると、何故か兵士に連行された。そしてそのまま済し崩し的に周りが城壁に囲まれたでっかい城に連行されて、王様の前に出された。
長身で歳は大体四十代後半あたりだろうか、眼光は鋭く、睨まれただけで息がつまりそうだ。
「お主の武勇は聞いておる、何でも竜人を素手で倒したとか……私も今だ信じられないのだが、これは本当なのか?」
「あっ、はい、一応」
「……そうか」
王様は眉根に指を当て、考える素振りを少しした後、急に俺の目を見据え、腹を括ったような、吹っ切れたような、そんな顔になる。
「これは私的なことなのだが、私からそなたに頼みたい事がある」
周りでヒソヒソと話していた貴族っぽい人達の中から、驚愕の声が上がる。なんだかすごいことらしい。
「ディアナにいた私の娘は覚えているだろうか?」
「はい、もちろん」
忘れてたら自分を呪うね。いや、マジで。
「あの娘がな、そなたに自らの専属騎士になってほしいらしくてな」
「は、はぁ……」
言っている意味が分からなく、つい曖昧な返事をしてしまう。異世界語って難しい。
『馬鹿言うな、我はしっかり翻訳したはずだ。主の言語機能に問題があるだけであろう』
(翻訳? そんな機能持ってんの? んじゃせんぞくきしって何?)
『知らん、興味ない』
(くっ、役に立たん!)
「どうした?」
顔に出ていたのか、王様は俺を訝しげに見てきた。
「いえいえ~(スマイル)」
「そうか、それで私からの頼みは前置きで話した通り、そなたに我が娘ミストの専属騎士になって欲しい」
周りが物凄いどよめきだした、せんぞくきしってそんなすごいのか。いや~けどな~、なんか役職っぽいけど分からないことをやるのはちょっとな~。せめて説明さえしてくれたら……しかし今更恥ずかしくて聞けない。
「ふむ、そなたにも考える時間は必要だろう。明日の朝までに決めてほしいが、それで構わないか?」
俺が黙っていると、王様は気を使ってくれたのか、ありがたい提案を出してくれた。
「あっ、はい! お心遣いありがとうございます!」
「うむ、では下がってよいぞ」
「はい! 失礼しました!」
た、助かった……。
「……ふぅ」
少年と貴族たちが出て行った謁見の間で、王は静かに息をついた。
「どうしましたかな陛下?」
隣で控えてその様子を見ていた初老の男は、落ち着いた動作で王のそばへ寄る。
「いやなに、これで良かったのだろうかとな」
「そのことでしたら、前にも言った通り私は反対ですよ、いくら姫様のお命を救ってくださった方といっても、身元不明の者を姫様のお傍に置くなど、大臣として認める訳にはいきませぬ」
「……レスター、確かにお前は正しい。私もそう思うよ、しかし――」
「分かっております。全く、姫様には敵いませんな。長年貴方様と共にあの方の成長を見守らせてもらいましたが、いやはや何と申し上げましょうか……」
「わがまま――か?」
「……そうですな、ですが大臣としては誠に遺憾ながら、わたくし自身は姫様にもっと自由に生きて欲しいと望んでおります」
「何だ、情でも移ったか? 元世話係よ」
王はからかうようにレスターに笑いかける。レスターはそれに答えるように目じりに年季の入ったしわをつけた。
「情などとっくに移っておりますよ、ミスト様がこの世にご生誕なされたときからずっと」
「そうだな……そうであったな。さぁ、はからずもミストに専属の騎士が出来た、これからが大変だぞ」
穏やかだった時間は、王の言葉と表情でかき消されていく。
「ええ、これが姫様最後のわがままになるかも知れませんね」
王は元からミストには正式にではないが騎士はつける予定だった。どうせ付けるならばミスト自身が選んだほうが良いと考えたまでである。
そして二人は予感していたのだ、盗賊の増大による各地の数多の被害、各国の資金不足、情勢は確かに傾いていた……大きな戦争のはじまりへ。
「あ、ありがとうございます」
攫われた人助けてそれぞれの住んでる場所に届け終わり、一旦ディアナに戻ると、何故か兵士に連行された。そしてそのまま済し崩し的に周りが城壁に囲まれたでっかい城に連行されて、王様の前に出された。
長身で歳は大体四十代後半あたりだろうか、眼光は鋭く、睨まれただけで息がつまりそうだ。
「お主の武勇は聞いておる、何でも竜人を素手で倒したとか……私も今だ信じられないのだが、これは本当なのか?」
「あっ、はい、一応」
「……そうか」
王様は眉根に指を当て、考える素振りを少しした後、急に俺の目を見据え、腹を括ったような、吹っ切れたような、そんな顔になる。
「これは私的なことなのだが、私からそなたに頼みたい事がある」
周りでヒソヒソと話していた貴族っぽい人達の中から、驚愕の声が上がる。なんだかすごいことらしい。
「ディアナにいた私の娘は覚えているだろうか?」
「はい、もちろん」
忘れてたら自分を呪うね。いや、マジで。
「あの娘がな、そなたに自らの専属騎士になってほしいらしくてな」
「は、はぁ……」
言っている意味が分からなく、つい曖昧な返事をしてしまう。異世界語って難しい。
『馬鹿言うな、我はしっかり翻訳したはずだ。主の言語機能に問題があるだけであろう』
(翻訳? そんな機能持ってんの? んじゃせんぞくきしって何?)
『知らん、興味ない』
(くっ、役に立たん!)
「どうした?」
顔に出ていたのか、王様は俺を訝しげに見てきた。
「いえいえ~(スマイル)」
「そうか、それで私からの頼みは前置きで話した通り、そなたに我が娘ミストの専属騎士になって欲しい」
周りが物凄いどよめきだした、せんぞくきしってそんなすごいのか。いや~けどな~、なんか役職っぽいけど分からないことをやるのはちょっとな~。せめて説明さえしてくれたら……しかし今更恥ずかしくて聞けない。
「ふむ、そなたにも考える時間は必要だろう。明日の朝までに決めてほしいが、それで構わないか?」
俺が黙っていると、王様は気を使ってくれたのか、ありがたい提案を出してくれた。
「あっ、はい! お心遣いありがとうございます!」
「うむ、では下がってよいぞ」
「はい! 失礼しました!」
た、助かった……。
「……ふぅ」
少年と貴族たちが出て行った謁見の間で、王は静かに息をついた。
「どうしましたかな陛下?」
隣で控えてその様子を見ていた初老の男は、落ち着いた動作で王のそばへ寄る。
「いやなに、これで良かったのだろうかとな」
「そのことでしたら、前にも言った通り私は反対ですよ、いくら姫様のお命を救ってくださった方といっても、身元不明の者を姫様のお傍に置くなど、大臣として認める訳にはいきませぬ」
「……レスター、確かにお前は正しい。私もそう思うよ、しかし――」
「分かっております。全く、姫様には敵いませんな。長年貴方様と共にあの方の成長を見守らせてもらいましたが、いやはや何と申し上げましょうか……」
「わがまま――か?」
「……そうですな、ですが大臣としては誠に遺憾ながら、わたくし自身は姫様にもっと自由に生きて欲しいと望んでおります」
「何だ、情でも移ったか? 元世話係よ」
王はからかうようにレスターに笑いかける。レスターはそれに答えるように目じりに年季の入ったしわをつけた。
「情などとっくに移っておりますよ、ミスト様がこの世にご生誕なされたときからずっと」
「そうだな……そうであったな。さぁ、はからずもミストに専属の騎士が出来た、これからが大変だぞ」
穏やかだった時間は、王の言葉と表情でかき消されていく。
「ええ、これが姫様最後のわがままになるかも知れませんね」
王は元からミストには正式にではないが騎士はつける予定だった。どうせ付けるならばミスト自身が選んだほうが良いと考えたまでである。
そして二人は予感していたのだ、盗賊の増大による各地の数多の被害、各国の資金不足、情勢は確かに傾いていた……大きな戦争のはじまりへ。
更新日:2011-08-06 01:43:31