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水の町 ディアナ

 おはようございます、こんにちは、こんばんわ、どうも平川透です。現在の状況を説明しますと――

「と~る~! ねえ見て見て、水が空に飛んでる~」

「そうだな~」

 辺りを見回すと、そこら中噴水だらけで、視界に入るのは人と水ばっかし。町に入ってからこれしか見てないんじゃないかと思ってしまうほどだ。 

「ト~ル~、ここどこ~?」

「分からん」

「ト~ル~、お腹減った~」

「そうか」

「ト~ル~――」

「分からん」

「……まだ何も言ってないのに。あっ! ト~ル~――」

 ……。

 …………。

 ………………――――

「? どうしたのトール?」

 ――……はっ!? ここはどこ? 私は誰?

「とおる? それは俺のことを言っているのか?」

「大丈夫? 頭でも打ったの?」

 俺の周りでパタパタと飛んでいた妖精が、俺の後頭部をポンポンとたたき出す。うぉう……イタ気持ちいい。

「オーケー分かった、冷静になるしかないんだな? それしか俺の道はないんだよな?」

 ならば仕方ない、かなりありえないが、この現実を認めよう。

「す~は~、す~は~」

 深呼吸……溜めて……溜めて……。

「迷子だ~~~~!!」
 

 五時間前。

「ここは……どこだ?」

 目が覚めたら、俺はまた森の中に居た。

「あっ、起きた?」

 その横では、果実っぽいものを齧りながら俺の顔を覗き込む妖精の少女。

「何、それ」

「これ?」

 指摘すると、少女は少し誇らしげに胸を張る。

「近くで見つけたんだ~、おいしそうでしょ?」

 あ~、確かにうまそうだ。俺もそこらで探してこようかな……。

「食べる?」

「え?」

「あたしはまた別のを採ってくるからいいよ、あなたは――――え~と」

「ああ、そういえば自己紹介してなかったな、俺は平川透だ、透でいいよ」

 と、渡された果実を咀嚼しながら話すと、何故か少女はハッと目を見開き、顔が赤くなっていく。うん、おいしいなこれ。

「あ、あたしはカルク……その、じゃあトール、ここで待ってて、もっと採ってくるから」

「おう、分かった、ありがとうな」

「う、うん! あっ、あわっ、あわわっ、やっ、じゃ、じゃあ行ってくるね……!」

 俺が果実を咀嚼するたびに、ビクッと声を出して反応するカルク。なにこれ? よく分からんが面白い。

「いってら~ってはやっ!」

 物凄いスピードで羽をパタパタさせて飛んでいくカルク。俺が次に声を出した頃には、カルクはもう森の奥深くに行ってしまっていた。

「……ふぅ」

 静かになったところで、俺は頭の中で奴に声をかける。

(で? ここはどこよ?)

『別の世界に飛んだわけじゃないようだ。ふむ……お前の世界の言葉で言うならあの場から三万キロといったところだろう』

「三万!!?」

 思わず声に出してしまった。
 めちゃくちゃ飛ばされたな。まあ断崖絶壁に飛ばされなかっただけでも幸運……だよな? 

(うん。よし、じゃあさ、これが一番重要なんだけど、ここはどこだ?)

『ウルス森林。緑豊かな恵まれた森だ』

(ちがーう! そういう意味で言ったんじゃない! 俺の住んでた町からどれぐらい離れた場所なんだと聞いたんだ!)

『そんなもの分かるわけないだろう。別々の世界の距離など無限にも等しいと言ってもいいくらいなんだからな』

(……は? 別々の世界?)

 その言葉だけで結論は自分の中でもう出ていたが、あまりの信じ難さについオウム返し。

『……ああ。そういえば言い忘れていたな。お前は一度死に生き返った、以上)

「へ~そうなんだ~」

 ――――ん? あれ? 今衝撃的な爆弾発言が聞こえた気がしたんだが……聞き間違いだよね?

「今なんと?」

『平川透、享年十七歳、死因は後頭部強打による脳挫傷。ちなみにお前がもっていた物はすべて一緒に焼かれるそうだ』

「Noぉぉぉぉぉ!! 俺のゲームがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 五千万歩譲って俺が異世界召喚よろしくライトノベル的な体験をしてしまっていることは良くないがいい。けどね、理屈でわかっていたとしても、俺の本能とか精神とか大事な部分にはどうしても耐えられないことがあるんだよ!
 俺の心魂を注ぎ込んだ嫁たち、灰塵と帰す――――
 ――――夢も希望も見えない……俺の生きてる意味なんて……もう……。

更新日:2011-05-27 23:09:07

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