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(羽山さんを殺したのは誰だ?)
 第二ゲームにてロープで絞殺されていた羽山。彼を殺し、端末を奪ったのは誰なのか。
(田嶋ではない。伊月さんに端末を奪われようとしたときの取り乱しようは演技とは思えない。少なくとも田嶋以外に、人殺しがいるということになる)
 それが誰なのかは分からない。ここにいる誰かなのか、それともまだ見ぬ誰かなのか。
「三笠さん」
 呼びかけられ、純也は慌てて自分の思考を打ち切った。
 いつの間にか、留美の隣には美里の姿があった。
 美里は悪戯をしかける子供のような顔で笑うと、恐るべきことを口にした。
「ねぇねぇ、三笠さんは佐古下さんのこと好きなんですか?」
「……えっ?」
 何を言われたのか理解出来ず、純也はあんぐりと口を上げて美里を見上げた。
「さっきみんなと話してたんですよ、二人のこと。お互いに名前で呼び合ってますし、信頼し合っている感じがして、端から見れば恋人同士みたいだなぁって。で、どうなんですか?」
「ちょ、ちょっと……」
 救いを求めるように留美を見るが、彼女は苦笑を浮かべながらも興味はあるのか何も言おうとしない。
「お、俺は……その……」
「その?」
 言葉に詰まる純也に、美里の好奇の目が爛々と輝く。
「俺にとって美耶子さんは……」
 自分でも言葉に出来ない感情に戸惑いながら純也を続きを話そうとして、隣で眠っている美耶子の体が妙に強張っていることに気付いた。
「……もしかして美耶子さん、起きてる?」
 返事はなく、寝息の音が少し大きくなる。
「起きてるよね? 絶対起きてるよね?」
 返事はない。
「まぁまぁ、ここは男らしくズバッと言ってしまいましょうよ!」
「あ、いや、だから俺は……」
「俺は?」
 身を乗り出してくる美里。

 ピッ

 そして朗らかな空気を裂くようにして鳴り響く短い電子音。
 この場にいた全員が言葉を止め、動きを止め、自分の端末を見つめた。

 『第三ゲーム ロール』

 そこに表示されていた文字は、更なる悪夢への招待状だった。

更新日:2010-11-02 08:57:49

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