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インターバル2 『休息』

 どうすればいいのだろう?
 美耶子はずっと考えていた。
 伊月が広場に姿を見せてから、美耶子たちは黙したまま座り込んでいた。
 伊月は沈痛な面持ちで地面を見つめている。それを気遣うように美里と留美が傍についいているが、彼女たちもどう声をかければいいか迷っているようだった。
 何が起きたかは伊月から既に聞いていた。
 玲子がスタンガンで伊月の身動きを封じ、彼を試験場へと突き飛ばしたという。そこでどんな会話があったのかまでは分からないが、伊月は短く、自分は託されたのだと語った。
 そうしてまた仲間が一人いなくなった。
 気力も尽きかけ、激しい頭痛が頭を襲う。今にも泣き出してしまいそうになる心を、しかし美耶子は必死に押さえ込んでいた。
 自分よりも純也の方がずっと苦しいに決まっている。
 純也はいつもみんなの先頭に立ち、誰よりも頭を働かせて、みんなを死なせないように頑張ってきたのだ。その疲労は美耶子よりも深刻なものだろう。
 それが分かるからこそ、美耶子は弱い姿を見せるわけにはいかなかった。
 だから今、自分が純也に何をしてあげればいいか、それだけを美耶子は考えている。
「あ、あの……」
 美耶子は意を決して、口を開いた。
 美耶子を除く全員はゆっくりとした動作で美耶子へと視線を向ける。
「どこか休めるところを探しませんか? みんな疲れが溜まってるみたいですし、食べ物とかも探さないと……」
「……そうだね。ここで無駄に時間を消費していても始まらない。まだ次のゲームは始まっていないようだし、今の内に休めるところを探そう」
 美耶子の言葉に賛同したのは留美だった。
 二人の提案に反対の声など上がるはずもなく、美耶子たちはマップを頼りに休める場所を探すこととなった。
 広場から通路へと進む。前のフロアーと同じ通路が闇の向こうへと延びている。
「休憩所というのがマップにあるな。そこを目指そうか」
 伊月が先頭を歩き、純也が最後尾を歩く。
 トラップを警戒しながらの行軍は思ったよりも進まず、遅々とした歩みはいつ始まるかも分からない次のゲームへの不安と焦りを煽り始める。
 田嶋たちとは出会うことはなかった。だがもしかしたら休憩所に彼らも集まっているかもしれない。
 何事もなければいいのに、美耶子はそう願わざるを得ない。

更新日:2010-10-05 06:25:11

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