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2.鼓 動
4階のバックヤードの中に、ポップルームがある。
ポップとは、売り場で使う全ての広告表示物の事を言う。
最近はパソコンなどで作られた物が増えたが、まだまだ
手描きも多い。
睦子が働く店では、専用の人間を一人雇っていた。
見本生地に付ける小さい札は売り場で書いているが、
B6以上の大きさの物は全てポップルームに依頼している。
「これ、お願いします」
睦子はポップ社員である上村遥子に、主任から預かった
原稿を渡した。
「今日中かぁ・・・」
依頼書を見て、遥子がそう洩らした。10枚もあるのだから、
そう言うのも無理は無いだろう。仕事はこれだけでは
無いのだから。
「すみません、急な上に多くて」
「ううん。アユちゃんが謝る事じゃないわよ」
遥子は優しく微笑んだ。
睦子は、彼女が好きだった。
丸顔で、柔らかい髪をボブカットにしていて、地味だが美人だ。
笑顔が柔らかくて優しいが、どこか寂しげで儚い印象がある。
睦子が入社した時を同じくして、他店から転勤してきた。
この店の中では同期みたいな立場だったからか、昼休みに
一緒になった時に親しく話し、以来仲良しだ。
一人っ子の睦子にとって、遥子は優しいお姉さんのような
存在だった。睦子より8歳も年上だ。
4階のバックヤードの中に、ポップルームがある。
ポップとは、売り場で使う全ての広告表示物の事を言う。
最近はパソコンなどで作られた物が増えたが、まだまだ
手描きも多い。
睦子が働く店では、専用の人間を一人雇っていた。
見本生地に付ける小さい札は売り場で書いているが、
B6以上の大きさの物は全てポップルームに依頼している。
「これ、お願いします」
睦子はポップ社員である上村遥子に、主任から預かった
原稿を渡した。
「今日中かぁ・・・」
依頼書を見て、遥子がそう洩らした。10枚もあるのだから、
そう言うのも無理は無いだろう。仕事はこれだけでは
無いのだから。
「すみません、急な上に多くて」
「ううん。アユちゃんが謝る事じゃないわよ」
遥子は優しく微笑んだ。
睦子は、彼女が好きだった。
丸顔で、柔らかい髪をボブカットにしていて、地味だが美人だ。
笑顔が柔らかくて優しいが、どこか寂しげで儚い印象がある。
睦子が入社した時を同じくして、他店から転勤してきた。
この店の中では同期みたいな立場だったからか、昼休みに
一緒になった時に親しく話し、以来仲良しだ。
一人っ子の睦子にとって、遥子は優しいお姉さんのような
存在だった。睦子より8歳も年上だ。
更新日:2010-08-07 20:51:48