• 280 / 331 ページ
 中川とは、オジサン友田とは別の会社のバイヤーで、確か29歳と
か言っていた。茹で卵のカラを剥いたような、ツルリとした感じの
色白の男で、少しズングリムックリした印象だ。大人しそうな雰囲気である。
 今日も午後から応援に来ている。
 一番頻繁に応援に来るのは友田だが、中川はワンシーズンに1
回くらいしか来ない。ただ、睦子が休んでいる間は、頻繁に来ていて、
睦子の事を凄く心配していたと言う。
「あの人、真面目そうだし、悪くないんじゃない?」
 京子にそう言われたが、あまり気が進まない。
 ところが夕方の終業時間が近くなってきた頃、中川がレジにいる
睦子と、そのそばにいた和子に声をかけてきた。
「今日、この後さ。良かったら一緒に飲みに行かない?鮎川さんの
全快祝いって事で」
 白い顔を赤らめている。
「あっ、それ、いいっすね。俺と石川さんも一緒じゃ、まずいですか?」
 そばにいたバイトの工藤が口を入れて来た。
「いや、いいよ。一緒に行こうよ」
 2人の会話に戸惑っていると、和子が、
「行こうよう、アユちゃん」
 と、同意を求めて来た。そして、睦子が返事をするまえに、
「よし、決定!」と決められてしまった。
 まぁ、いいか。断る理由も特に無いし。2人きりで行くわけじゃない。
みんな一緒だもん。
 そう思って行ったものの、ちっとも楽しく無かった。

更新日:2010-09-08 12:27:22

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook