- 278 / 331 ページ
9.進むべき道
街はすっかりクリスマスの装いだ。
12月に入ってから、めっきり冷え込んで来た。
短い秋だった。
睦子は1年の中で秋が一番好きだったが、その秋の1カ月を丸々
家の中で過ごし、物凄く損した気分だった。
売り場のディスプレイも、クリスマス柄の物や小物で彩られていた。
赤と緑の反物が目立つ。
睦子は12月に入ってすぐに職場に復帰した。だが、本調子とは
言えない。そんな睦子を気遣ってくれて、主任は睦子をレジの担当にした。
服地売り場の人間だけでなく、他の売り場の誰もが、顔を合わす度に
「大丈夫?」と心配そうに尋ねてくれた。
そんな中で、睦子は結城とだけは極力顔を合わせないようにしていた。
結局、あれから一度も連絡を取り合っていない。
愛想を尽かされたんだ。そう思う。
だが出勤3日目に、結城からメールが来た。
“職場復帰、おめでとう。どうして顔を合わせようとしないの?”
その言葉を見て、動揺する。
なんで、今更こんなメールを寄越すの?
ずっと、なんの連絡もくれなかった癖に……。
結城の真意がわからない。
休んでいる間、睦子は泣き暮らしてばかりだった。将来への不安、
不甲斐ない自分自身への怒り、なんの連絡もない結城に対する絶望感。
街はすっかりクリスマスの装いだ。
12月に入ってから、めっきり冷え込んで来た。
短い秋だった。
睦子は1年の中で秋が一番好きだったが、その秋の1カ月を丸々
家の中で過ごし、物凄く損した気分だった。
売り場のディスプレイも、クリスマス柄の物や小物で彩られていた。
赤と緑の反物が目立つ。
睦子は12月に入ってすぐに職場に復帰した。だが、本調子とは
言えない。そんな睦子を気遣ってくれて、主任は睦子をレジの担当にした。
服地売り場の人間だけでなく、他の売り場の誰もが、顔を合わす度に
「大丈夫?」と心配そうに尋ねてくれた。
そんな中で、睦子は結城とだけは極力顔を合わせないようにしていた。
結局、あれから一度も連絡を取り合っていない。
愛想を尽かされたんだ。そう思う。
だが出勤3日目に、結城からメールが来た。
“職場復帰、おめでとう。どうして顔を合わせようとしないの?”
その言葉を見て、動揺する。
なんで、今更こんなメールを寄越すの?
ずっと、なんの連絡もくれなかった癖に……。
結城の真意がわからない。
休んでいる間、睦子は泣き暮らしてばかりだった。将来への不安、
不甲斐ない自分自身への怒り、なんの連絡もない結城に対する絶望感。
更新日:2010-09-08 12:25:24