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8.迷い道
10月末日をもって、上村遥子は退職して行った。
本社との繋がりが深い主任クラスは退職の事情を知っているが、
他の社員は知らない。だから突然の遥子の退職に、みんなが驚いていた。
優しくて聞き上手な彼女は、多くの従業員達から好かれていた。
だから誰もがその退職を嘆いたのだった。
最後の日には、多くの花束やプレゼントを貰い、惜しまれて去って行った。
遥子の代わりに来たポップ描きは、21歳の女の子だった。
今年の春、デザインの専門学校を卒業したばかりだと言う。
久保メグミと言った。
ほっそりとして、黒目勝ちな瞳がクリっとした、可愛らしい子だ。
主任を始め、多くの男子従業員が相好を崩し、鼻の下を伸ばした。
余所の売り場の男子社員が、「アイドルみたいな子だよな」と、
目を輝かせて話しているのを聞いた。
この間、木村洵子と正式に付き合いだしたばかりの河嶋も、
ポップへ行くと長居をして、なかなか戻って来ない。
「何やってるのよ、忙しいのにっ!」
と、浜田はしょっちゅう腹を立てていた。
そんな河嶋とメグミに対して、洵子は嫉妬し、それを河嶋にこぼした。
それに対し、「勘違いするなよ。嫉妬深い女は好きじゃない」と、
言ったらしい。
ただ単に、男の習性として、可愛い女の子についつい鼻の下を
伸ばしているだけなのかもしれないが、言い方ってものがあるだろう。
つくづく、河嶋と言う男は、相手の立場や気持ちを考えない
奴なんだなと実感する。
10月末日をもって、上村遥子は退職して行った。
本社との繋がりが深い主任クラスは退職の事情を知っているが、
他の社員は知らない。だから突然の遥子の退職に、みんなが驚いていた。
優しくて聞き上手な彼女は、多くの従業員達から好かれていた。
だから誰もがその退職を嘆いたのだった。
最後の日には、多くの花束やプレゼントを貰い、惜しまれて去って行った。
遥子の代わりに来たポップ描きは、21歳の女の子だった。
今年の春、デザインの専門学校を卒業したばかりだと言う。
久保メグミと言った。
ほっそりとして、黒目勝ちな瞳がクリっとした、可愛らしい子だ。
主任を始め、多くの男子従業員が相好を崩し、鼻の下を伸ばした。
余所の売り場の男子社員が、「アイドルみたいな子だよな」と、
目を輝かせて話しているのを聞いた。
この間、木村洵子と正式に付き合いだしたばかりの河嶋も、
ポップへ行くと長居をして、なかなか戻って来ない。
「何やってるのよ、忙しいのにっ!」
と、浜田はしょっちゅう腹を立てていた。
そんな河嶋とメグミに対して、洵子は嫉妬し、それを河嶋にこぼした。
それに対し、「勘違いするなよ。嫉妬深い女は好きじゃない」と、
言ったらしい。
ただ単に、男の習性として、可愛い女の子についつい鼻の下を
伸ばしているだけなのかもしれないが、言い方ってものがあるだろう。
つくづく、河嶋と言う男は、相手の立場や気持ちを考えない
奴なんだなと実感する。
更新日:2010-08-29 14:42:50