• 142 / 331 ページ
「早くいい人、見つけなよ。いつまでも独りでいるのは、
やっぱり良く無いよ。何かって言うと思い出しては落ち込ん
でるんじゃないの?」
 ははは…、鋭い。
「でもさ。いい人を見つけたとしても、また同じような事を
言われたらどうしよう?そしたらもう立ち直れないような気がして…」
「そんな事を言う人は、いい人じゃないよ。即却下。ゴミ箱行き。
ろくでなしの言う事にイチイチ傷ついて落ち込むなんてバカバカしい
じゃん。むっちゃんの良さがわからない男の事なんか、
さっさと忘れる事!」
 強い口調ではっきり言う京子が頼もしく見えた。
「あたし、もし彼に嫌われたとしたら、その時にはきっぱり諦める。
素のままのあたしを丸ごと好きになってくれてるから、あたしも
彼の事が好きなんだもん。だからあたしは、彼の前ではいつも
正直でいられるんだ。彼も同じ。お互いに我がまま言い合ってる。
その関係を続けられなくなったら、終わるしかないしね」
「京子ちゃんって、逞しいんだね」
 睦子の言葉に、京子は嬉しそうな笑顔になった。
「むっちゃん。何か今のむっちゃんって、すっごく可愛い!襲いたく
なっちゃうよ。あたし、いつでも慰めてあげるよ?」
「な、慰めるって…?」
「今度さ。2人でラブホに行ってみない?女の子同士なら入れて
くれるらしいよ。あたし、エッチする時はいつも彼の部屋だから、
ラブホに行った事が無いの。凄く興味あるんだ。ねぇ、行かない?」
「興味あるなら、彼に連れてって貰いなさい。あたしは遠慮して
おきます。さぁ、仕事に戻ろうか」
 睦子は立ち上がってカップを捨てると、足早に売り場へと向かった。
 京子の言葉に笑いながら。

更新日:2010-08-12 15:27:55

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook