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小説

携帯でもPCでも書ける!

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折れた心

手術までの期間はただベッドに横になっているだけでした。
兄ちゃんに持って来て貰っていたドリームキャストを何も考えずにやり続けていました。

僕がやった事がなくてハマりそうなゲーム……兄ちゃんのチョイスは見事でした。
賞金の約束をしていたら払わなければなりませんでした。
手術をして頭痛がなくなるとずっと楽しんでいたのに、もう楽しいとは思えませんでした。
ただ機械的に進めているだけ。
家族が見舞いに来ても喋る事なく黙ってゲームを続けていました。
父さんと母さんは、なにかしきりに話しかけていたと思うけど、右から左への状態。
最初のうちは聞いていなくても相槌だけは打っていたと思うけど、その内に、父さんたちが喋り出すと横になって布団をかぶって狸寝入り。
面会時間が終わるまでそうしていました。
帰った後に病室で一人になると、なんであんな態度を取ったのだろうと泣きながら反省しては、翌日に同じ事の繰り返し。

兄ちゃんに対しては一番ひどい態度を取っていたと思う。
なにか喋れば、うるさいと言わんばかりにテーブルを叩いたり壁を蹴ったり。
携帯にメールが届いた時に、着信をバイブにしておけと注意されたのが面白くなくて、携帯を床に叩きつけて壊したり。
それでも何も言わず毎日来て、そばに付き添ってくれていました。
僕がゲームをしていれば黙ってその様子を見ていて、僕が布団をかぶって寝れば、枕元の椅子でじっと座っていました。
そして僕の機嫌が悪くなると当たり散らされる。
……毎日来てくれているのに、どうしてこんな態度を取っているんだろう……自分で自分が嫌になっていました。
その内に来てくれなくなってしまうのでは……そうならないためには自分がどうしたら良いのかは分かっていても、自分の感情をどうする事も出来ませんでした。

帰る間際に、「何か欲しいものはあるか?」と必ず聞いてくれる兄ちゃん。
僕が返す言葉は必ず「いらない」。
それでも毎日聞いてくれる兄ちゃん。
聞いてくれる事が嬉しかったけれど、毎回聞いて来る事を煩わしいと思う事もあった。
ある時そんなに欲しいものが聞きたいのならと、思わず「健康な体」と言ってしまいました。

……その時に見せた、兄ちゃんの困り切った悲しそうな顔を、僕は一生忘れることはないと思う。

更新日:2010-07-30 16:20:46