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プロローグ
部屋で簡単に荷物を纏めていると、控えめなノックが響いた。
「どうぞ」
短い言葉に応じて、ドアが開く。
部屋の中の状態を見て、相手は眉を寄せて名前を呼んだ。視線も向けずに、それに応える。
「ああエリック。ちょっと手が離せないんだけど、何か用事?」
トランクに洋服を丸めて突っこむ。
「その……、君が、退学するって聞いたから」
「で?」
ぱたん、とトランクの蓋を閉める。荷物はさほど多くない。帰ってしばらく生活する間のものさえあればいいのだ。残りは人を使って対処すればいい。
「本当なのか?」
「冗談で荷物を纏めたりしてないよ。大掃除にはまだ早い」
最後の言葉の意味が判らなかったらしく、青年は小首を傾げた。
「おめでとう、エリック。これで、教授の『お気に入り』はまた君のものだ」
皮肉げに言うと、相手はあからさまにむっとした。
「そんなこと、どうでもいいんだよ。大体、新年度早々退学とかどういうつもりなんだ? 今続けている研究だって……」
「そうだね。どうでもいいんだよ」
遮って、視線を窓へ向ける。
「ここでの暇つぶしよりも、もっと面白そうなことが見つかったんだ」
遙か遠い、西方の土地に。
「どうぞ」
短い言葉に応じて、ドアが開く。
部屋の中の状態を見て、相手は眉を寄せて名前を呼んだ。視線も向けずに、それに応える。
「ああエリック。ちょっと手が離せないんだけど、何か用事?」
トランクに洋服を丸めて突っこむ。
「その……、君が、退学するって聞いたから」
「で?」
ぱたん、とトランクの蓋を閉める。荷物はさほど多くない。帰ってしばらく生活する間のものさえあればいいのだ。残りは人を使って対処すればいい。
「本当なのか?」
「冗談で荷物を纏めたりしてないよ。大掃除にはまだ早い」
最後の言葉の意味が判らなかったらしく、青年は小首を傾げた。
「おめでとう、エリック。これで、教授の『お気に入り』はまた君のものだ」
皮肉げに言うと、相手はあからさまにむっとした。
「そんなこと、どうでもいいんだよ。大体、新年度早々退学とかどういうつもりなんだ? 今続けている研究だって……」
「そうだね。どうでもいいんだよ」
遮って、視線を窓へ向ける。
「ここでの暇つぶしよりも、もっと面白そうなことが見つかったんだ」
遙か遠い、西方の土地に。
更新日:2010-07-25 16:24:06