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寧々の家族


土曜日・・・
朝かなり早い時間に約束をして、ふたりで名古屋に向かった。

もしも、結婚すること、3月にはシンガポールへ行くことを
寧々の両親に快諾して貰えなかったら分かって貰えるまで
シュウはホテルに泊まってでも日曜日にもう1度お願いに行く覚悟だった。

寧々は、両親にとってたったひとりの娘だったから反対も覚悟していた。

シュウの両親から託った手土産もたくさん持って来ていた。
これから親戚付き合いをする寧々の家族を大切に思ってくれての事だった。

インターを出て寧々の言う通りに1時間ほど走って着いた家。
それは、純和風の門構えの大きな平屋建ての家。
和風の庭園には、池に鯉が泳ぎ、手入れの行き届いた樹木が並び
石灯籠や御影石のテーブルやイスが違和感なく溶け込んだ日本庭園。

シュウは、相当の覚悟で来たものの寧々の家に圧倒されていた。

「どうしたの ? 」

「いや、あんまり凄い家なんで驚いてる」

「これは、亡くなったおじいちゃんの趣味だから父はそれを守っているだけ」

「それにしても凄いよ。どこかの高級料亭みたいだよ。
寧々、凄い家に住んでたんだな。圧倒されるけど不思議に落ち着く感じもする」

「私は、生まれた家だから、やっぱり落ち着くけどね。さぁ入ろう」

「うん」

「ただいま、お母さん・・・」

すると奥から寧々の父親が・・・
「寧々、おかえり・・・さぁどうぞ、遠くから疲れたでしょう ?
上がってゆっくり寛いでください。さぁどうぞどうぞ」

広い和室の客間に通された。床の間には由緒ありげな掛け軸があり
日本庭園が、この部屋から一望出来る。絵葉書にでもなりそうな景色。

「お母さんは ? 」

「昨夜から下拵えを始めて朝早くから寧々の好きなものを作ってるよ。
シンガポールに行ったら当分は食べられないだろうからってね」

「では、お許し頂けるのでしょうか ? 」とシュウが緊張して言った。

「こんな娘ですが、寧々のこと宜しくお願い致します。
向こうに行けば頼りになるのは、あなただけですからね」

「ありがとうございます。必ず寧々さんを幸せにします」

「ありがとう。寧々は幸せものです。あなたのような方に出会えて。
今夜は、ゆっくりしていけるんだろう ? 明日は予定があるのか ? 」

「予定はしてないけど、しなければならない事はたくさんあるわ」

「良かったら泊まって行ってください。部屋だけはいくらでもありますから」

「ありがとうございます」シュウが、心から安心していたのが見てて分かった。

その日は昼間から母の手作りの料理でシュウと父は、初めてお酒を酌み交わした。
私は母の作る料理もしばらく食べられないんだと改めて思っていた。

更新日:2010-10-09 13:35:27

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