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小説

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ひとり


寄せては返す波に、足下の砂をさらわれて
素足に感じる海水の冷たさと逃げて行く砂の心細さが
今の私のそのままの気持ちを表しているかのようだ。

まだ6月、海開きは、7月だったかしら
人も疎らな海に、ひとりで居る私は
どんな風に見られているのか、そんなことも気にならない。

この季節、一人旅なんかに出るんじゃなかった。

どこへ行っても修学旅行の学生と出会う。
昨日は、高校生の団体、きょうは、中学生だろうか?

あんなに、無邪気に笑っていられることが
懐かしくもあり、羨ましくもあった。
私にも、あんな時代が、あったのよね。

出来ることなら、あの頃に戻りたい。
戻って、もう1度、やり直したい。

愛したら、愛した人は、いつも傍に居てくれる。
そんな簡単なことも望めなかった。

何故なら、彼には、帰るべき家庭があったから。

分かっていた。
彼を独り占め出来ないことも、一緒に、朝を迎えられないことも
もっと大人なつもりでいたのに。

大人って何だろう。
寂しくても甘えたりしない。自分の立場を弁えてる。
無理なことは、思っても口にはしない。すべて自分が、我慢する。

そうして過ごして来た、2年もの間、誰にも知られることも無く。
そして、誰にも気付かれることも無く、ふたりは、終わった。

修羅場すら無かった。それは、静かに、終止符を打った。

彼は、温かな家庭へと帰って行き
私は、忘れるために、ここへ来た。

海が、見たくなった。
そんな単純な理由だけで、バイトを休んで。

スカートの裾を持ち上げて、波と暫く遊んでいた。

やっぱりひとりじゃ、つまらない。
そんな、当たり前のことに、気付く。

海から上がって濡れた足を乾かしながら、浜辺に座っていた。

見上げると、どんより曇った梅雨時の空。
今にも雨が、降り出しそうな気配を感じて

ヒールスニーカーを履いて、立ち上がった。
スカートに付いた砂をはらって
遠い海の先に見える船を見送って・・・。

宿泊しているペンションへと向かう。

更新日:2010-07-22 01:24:44