- 4 / 16 ページ
◇201X年9月17日 13:24 ~日常~
「ダウト」
「……ほぅ」
俺は人差し指をピンと立てて宣言した。
机の向かいに座っている、ミミズクみたいな髪型をした女は嬉しそうに口を尖らせる。
「そいつは完全密室なんかじゃあない。昨今のミステリー好きなら鼻で笑うだろうよ。俺なら脱出できる」
「自信満々ね。いいわ、聞こうじゃない」
「おっと、それを今すぐ説明しちまってもいいけど――少しは読者に考える時間をやろうぜ」
「そうね。どうせお粗末なトリックだろうけど、たまには考える楽しみがあって良いと思うわ」
そして顔を見合わせ、笑い合う。
俺の名はゼンカ。黒木全火(くろきぜんか)だ。しがない高校一年生である。
そして目の前に座っているのはキリム。本名は古矢霧夢(ふるやきりむ)。俺のクラスメートで幼馴染で、夏でも厚着しているため目立たないが実は胸が大きいという事をこの前水泳の授業の時に知った。
おかしいな。中学の時は絶壁だった気がするが。
「どこを見ているの」
「え? いや、別に。古新聞をちょっと」
「……知ってる? 女の子って、男が自分のどこを見ているかすぐにわかるんだよ」
「マジでか……気をつけよう」
「チラ見も良い気分じゃないけど、ガン見はもっとやめてね」
「じゃあ用法用量を守って正しく見るよ」
「そうして」
「……見るのはいいのか」
「優越感を感じるからいい」
「宇佐美が聞いたらブチギレるだろうな」
編注、宇佐美とは隣のクラスの宇佐美遊羽(うさみゆうは)の事である。絶壁である。
っていうか同い年とは思えないロリッ子である。
「……ほぅ」
と、缶ジュースを一口啜って至福に顔を緩ませるキリム。
その「ほう」ってやつは、何だかフクロウっぽいキリムの口癖だ。
キャラ付けの心算なのだろうか。
「キャラ付けは大事だよ。メインヒロインなら尚の事」
「お前は自分の事をどれだけ過大評価してるんだ」
「無個性なのを取り得にしてるゼンカには解らないよ」
「悪かったな!」
口癖一つでキャラが立つなら苦労はしねぇ。
「それにしても健全な高校男子が昼休みに探偵ごっこなんて、大概な青春ね」
「お前に言われたかねぇよ」
机の上の古新聞を片付けながらキリムは言う。
日課だと思われると困るから弁解しておくが、こんなのは今日に限っての事である。
キリムが突発的によく解らない行動に出るのはいつもの事だが、どうしてまた今日は30年以上も昔の事件なんか持ち出してきたんだ?
「別に推理ごっこがしたかった、もといさせたかったわけじゃないよ」
「じゃあさせんなよ」
「乗り気だったくせに。……まぁ、本題はこっち」
何枚かの、例の犯人蒸発事件の記事のスクラップ。
キリムはそのうちの一つを指差した。
そこには自力で脱出してきた子供を撮影した写真が載っている。
しかしそれがどうしたのか。
またキリムの顔を見ると、キリムもこちらの顔を見つめて言った。
「誰かに似てない?」
「……いや、わかんねぇ。有名人の子供時代の写真で誰なのかを当てるクイズとか、正解した試しがねぇんだ」
「そう。ゼンカは人の目を見て話してないもんね」
「人を対人恐怖症みたく言うな」
確かに目を見て話すのは苦手だが。
っていうか見透かされてたのか……。
それともさっきの女の子は視線に敏感とかの話題はマジだったのか。
「いや、それは流石に目を見てればわかる」
「そうかい」
本気で呆れ顔を浮かべるキリムの視線に耐え切れず顔を背ける俺であった。
「ダウト」
「……ほぅ」
俺は人差し指をピンと立てて宣言した。
机の向かいに座っている、ミミズクみたいな髪型をした女は嬉しそうに口を尖らせる。
「そいつは完全密室なんかじゃあない。昨今のミステリー好きなら鼻で笑うだろうよ。俺なら脱出できる」
「自信満々ね。いいわ、聞こうじゃない」
「おっと、それを今すぐ説明しちまってもいいけど――少しは読者に考える時間をやろうぜ」
「そうね。どうせお粗末なトリックだろうけど、たまには考える楽しみがあって良いと思うわ」
そして顔を見合わせ、笑い合う。
俺の名はゼンカ。黒木全火(くろきぜんか)だ。しがない高校一年生である。
そして目の前に座っているのはキリム。本名は古矢霧夢(ふるやきりむ)。俺のクラスメートで幼馴染で、夏でも厚着しているため目立たないが実は胸が大きいという事をこの前水泳の授業の時に知った。
おかしいな。中学の時は絶壁だった気がするが。
「どこを見ているの」
「え? いや、別に。古新聞をちょっと」
「……知ってる? 女の子って、男が自分のどこを見ているかすぐにわかるんだよ」
「マジでか……気をつけよう」
「チラ見も良い気分じゃないけど、ガン見はもっとやめてね」
「じゃあ用法用量を守って正しく見るよ」
「そうして」
「……見るのはいいのか」
「優越感を感じるからいい」
「宇佐美が聞いたらブチギレるだろうな」
編注、宇佐美とは隣のクラスの宇佐美遊羽(うさみゆうは)の事である。絶壁である。
っていうか同い年とは思えないロリッ子である。
「……ほぅ」
と、缶ジュースを一口啜って至福に顔を緩ませるキリム。
その「ほう」ってやつは、何だかフクロウっぽいキリムの口癖だ。
キャラ付けの心算なのだろうか。
「キャラ付けは大事だよ。メインヒロインなら尚の事」
「お前は自分の事をどれだけ過大評価してるんだ」
「無個性なのを取り得にしてるゼンカには解らないよ」
「悪かったな!」
口癖一つでキャラが立つなら苦労はしねぇ。
「それにしても健全な高校男子が昼休みに探偵ごっこなんて、大概な青春ね」
「お前に言われたかねぇよ」
机の上の古新聞を片付けながらキリムは言う。
日課だと思われると困るから弁解しておくが、こんなのは今日に限っての事である。
キリムが突発的によく解らない行動に出るのはいつもの事だが、どうしてまた今日は30年以上も昔の事件なんか持ち出してきたんだ?
「別に推理ごっこがしたかった、もといさせたかったわけじゃないよ」
「じゃあさせんなよ」
「乗り気だったくせに。……まぁ、本題はこっち」
何枚かの、例の犯人蒸発事件の記事のスクラップ。
キリムはそのうちの一つを指差した。
そこには自力で脱出してきた子供を撮影した写真が載っている。
しかしそれがどうしたのか。
またキリムの顔を見ると、キリムもこちらの顔を見つめて言った。
「誰かに似てない?」
「……いや、わかんねぇ。有名人の子供時代の写真で誰なのかを当てるクイズとか、正解した試しがねぇんだ」
「そう。ゼンカは人の目を見て話してないもんね」
「人を対人恐怖症みたく言うな」
確かに目を見て話すのは苦手だが。
っていうか見透かされてたのか……。
それともさっきの女の子は視線に敏感とかの話題はマジだったのか。
「いや、それは流石に目を見てればわかる」
「そうかい」
本気で呆れ顔を浮かべるキリムの視線に耐え切れず顔を背ける俺であった。
更新日:2010-07-12 22:55:23