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Ⅲ レジスタンス

「ダグ叔父さん!」
首都にあるレジスタンスの秘密のアジトで、アキトは久し振りに叔父ダグ・リョーガと会った。
「アキトか……随分、大きくなったなぁ。3年振りか」
アキトは、頼りがいがあって大様な感じのする叔父が、昔からとても好きだった。
叔父は誰からも好かれる好人物だったし、義侠心もあったので、レジスタンスのリーダーを務めているというのも、当然だとアキトは思う。
アキトは後ろで黙っているヨーコを振り返り、
「紹介するよ、彼女はヨーコ」
改めて彼女を叔父に紹介した。
「……知っている。きみがこの前、たったひとりで1,000人の政府軍を全滅させたという、アンドロイドだろ。私はアキトの叔父、ダグ・リョーガ」
ダグはそう言って、ヨーコに右手を差し出す。
「……」
彼女はただ無言のまま、差し出された手を見詰めていた。
挨拶の握手が、どうやら理解出来ないらしい。
ダグはちょっと苦笑して、
「とにかく、アキトを無事にここまで一緒に連れてきてくれて、ありがとう。それと、政府軍の連中のことも……」
「この少年のことは、彼が勝手にワタシについて来ただけだし、政府軍のことは別にアナタたちのために戦った訳じゃない」
相変わらずヨーコは、機械のように無感情な口調で言う。
だけどそれは、彼女が額のクリスタルによって、マインドコントロールされているからだ。
そのことを、アキトは分かっていたし、ダグも知っていた。
そう、その額のクリスタルさえ無ければ、彼女はただの可愛らしい15、6歳位の美少女にしか見えない。だけど戦闘モードに入った途端、ヨーコは恐ろしく強くて俊敏で残酷な戦闘用マシーンに激変してしまう。それはここまで一緒に来る途中で、アキトはさんざん目のあたりにして、思い知らされてきたことだ。
だけどアキトはヨーコが好きだった。本当に何となく僅かだけど、彼女にも“感情”らしきものがあると、アキトは感じている。
なんだかんだいっても、彼女は彼女なりに自分を護ってくれたのだとアキトは思う。ここまでの旅は、アキトが無理やりヨーコについてきたようなものだったけれど、彼女が完全な“機械”だったら、ここまでこうして一緒にいてくれなかった筈だから、絶対に。

更新日:2010-08-07 00:42:45

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