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Ⅰ 出会い

10歳位の少女の額に銃口を突きつけ、男は言った。
「さあ、次はお前の番だ」
「……あ、あたし、足が動かない」
少女は怯えきった眼差しで、懇願するように相手を見上げたが、
「そうかい。じゃあ、リタイアだな」
その言葉が終わる間もなく、銃声が響いた。
次の瞬間、後頭部から大量の血と脳漿を撒き散らし、少女は仰向けに倒れていた。
男は振り返り、冷たくニヤリと笑うと、呆然と立ち尽くす少女より2、3歳ほど年上の少年に銃口を向けた。
「小僧、お前で最後だ」
「……」
少年は黙って、視線を前方に移す。
彼の目の前には、乾いた赤土の荒野が広がっている。
そこには、無数の地雷が埋められている。地雷原だった。
10リグ(100メートル)ほど先が、ちょっとだけ盛り土のように小高くなっている。そこがゴールだ。
ちょうどその半分、5リグまでの至るところに、バラバラになった子供たちの手足や肉片が飛び散っていた。みんな地雷を踏んでしまったのだ。


政府軍の特殊部隊の精鋭たちは、国境近くのレジスタンスの村を殲滅したばかりだった。
抵抗する村の男たち大人をあらかた殺しまくったあと、村の中央の広場に生き残った老人や、女・子供たちを集める。
リーダーらしき男が、
「ガキ共は、こっちへ来い!」
機関銃を構えた兵士たちに取り囲まれては、もう誰も抵抗することが出来ない。
「モタモタすんな! 早くしないと、テメーら皆殺しだぞ」
村の5歳から15歳位の少年少女20名程が、名残惜しそうにぞろぞろと輪の外へと動いた。
子供たちが全員輪の外に移動し終わったのを認めると、
「撃て!」
指揮官の合図とともに、村人たちに向けられた機関銃の銃口から、容赦なく火が吹いた。
犠牲者たちの断末魔の叫び声や悲鳴が響き渡る。
やがて、輪の中から人の声は一切しなくなった。それから、けたたましい銃声も止んだ。
皆殺しだった。
目の前で、自分の母親や祖父母、赤ん坊が殺されるのを目の当たりにして、子供たちの中から嗚咽や泣き声が上がる。
何発かの銃声が響き、泣き叫んでいた子供の何人かがその場に倒れた。

更新日:2010-07-09 20:33:42

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