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三人のお姫様とさびしい幽霊 3

 小さな国の三人の王女様。
 幽霊退治に来たはいいが、おっかなびっくり、一人は早々と失神しています。

 そこへ、うめくような男の声が聞こえたものだから、あ~姫、かしゆか姫の二人は思わず悲鳴を上げてしまいました。

「きゃー!」
「きゃー!」

 その悲鳴を聞いて、気を失っていたのっち姫が、がばっと立ち上がりました。

「今の何?」
「塔の中から、変な声が……」そう言って、あ~姫が塔の上の方を指差しました。
 あ~姫の青ざめた顔を見て、のっち姫は俄然勇気が湧いてきました。

「よし、私が正体を見極めてやる!」
 そう叫んで、塔の入り口の木の扉に体当たりしました。
 扉には鍵が掛かっていませんでした。
 バンと大きな音を立てて開き、のっち姫は中に転がり込みました。
「いったーっ」
「何をしてるの、あの子は」かしゆかが呆れて呟きます。
 しかし、のっち姫は何もひるむ事なく、すっくと立ち、階段を駆け上がっていきました。
「後を追いかけましょう」あ~姫が、決然と言いました。
「お姉様、大丈夫ですか?」かしゆか姫が心配そうに言いました。「さあ、お手を」
「大丈夫です。何のこれしき。一人で行けますとも」

 真夜中の塔の中は暗く、ろうそくとランプの灯りで足下を照らさなければ、とても階段を登る事は出来そうもありません。
 しかし、のっち姫は闇の中、どんどん上へと向かっていったようでした。
「あの子は、猫のようですね」あ~姫が感心したように言いました。「よく夜目が効くのですね」
「はい、いつも森の中で、夜狩りなどをしているようですから」
「王女ともあろうものが、どうしてあなた達は……」ため息をつくあ~姫。
「あら、私とあの男勝りを、一緒にして欲しくはないですわ」かしゆか姫は、いささかおカンムリで言い返しました。

 塔の最上階、昔、牢だったという噂のある部屋に着き、二人は、おそるおそる中を覗きました。
「のっち姫、中に幽……何かいますか」
「何もいないのでしょ、ほら、こちらへ来て」
「お姉様方、中には幽霊などいませんでした。ただ、この者が、ここへ住みついていたのです」
 のっち姫の明るい声がし、二人の姉はほっと胸を撫で下ろしかけて、気が付きました。
「この者? 誰かいるのですか?」あ~姫が声を掛け、手に持ったろうそくをかざしました。
「はい、どうやら昔からこの辺りに住んでいた者らしく、ここへこっそり入り込んでいたようですが、別に悪者ではないようです。話してみると、元は身分のある貴族であったような」

 そう言いながら、暗闇からのっち姫がヌッと現れました。
「大丈夫ですよ、お姉様。心配ありません」

「あ、ここにどうやらランプが」そう言って、いつの間にか奥の方まで入っていたかしゆか姫が、古ぼけたランプを探し出してきました。
 手に持ったランプの灯りを映し、部屋がほんのり明るくなりました。
 部屋の真ん中にぼろぼろのテーブルがあり、そこへあ~姫がろうそくを立てました。

「ああ、これで少しはマシになりました」かしゆか姫が手のホコリを払いながらニコリと微笑み、辺りを見回しました。「その元貴族とやらは、どこにいるのです?」
「また、かしゆか姉様はそんな事を言って」のっち姫が笑いながら、かしゆか姫の背中をどんと叩きました。「ほら、そこにいて、かしこまってますよ」

 のっち姫が指差した方には、誰もいませんでした。

 ただ、姫達の影が、ゆらゆらと揺れているだけでした。

〈つづく〉

更新日:2010-05-28 20:57:42

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