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三人のお姫様とさびしい幽霊 2

 小さな国の、小さなお城。
 三人のお姫様が、お城の塔に住みついているという幽霊を退治しようと、名乗りを上げました。

 古い石造りの、ホコリとカビの匂いのする不気味な塔が、お城の北側、人気のない一画にそびえ立っています。
 昔罪人を閉じ込めていたとも言われる、忌まわしい塔でした。

 その塔の側に、三人の王女が立っています。

 男装に剣を携え、髪を短く切りそろえ、王女というよりまるで王子様のようにりりしい、三女のっち姫。
 黒い衣装に長い黒髪、ほっそりとしてすらりと手足が長く、愛らしい顔に賢そうな目、次女かしゆか姫。
 慈愛あふれる聖母のふんわりとした可愛らしさ、けれど意思の強さを秘めた瞳が印象的な、長女あ~姫。

 三人は、塔の前で、顔を見合わせてました。
「お姉様方、早く中に入りましょう。大丈夫です。私がお二人をお守りします」
 のっち姫が血気にはやって言いました。
「それが心配なのよ、ねえあ~姫」
 かしゆか姫は、苦笑しながら、姉のあ~姫に話しかけます。
「待ちなさい、のっち姫。まず、幽霊とやらの話はどんな話なのですか」
 あ~姫の質問に、のっち姫が元気に答えます。
「さあ、知りません!」
「こらこら、そんな事を元気に答える人がいますか」
 かしゆか姫が手に持った扇でのっち姫の肩をぱしんと叩きました。そして、
「私が聞いたところによると、真夜中の十二時を過ぎると、何やら男のうめき声がするそうです」
「ええっ」気が強く見えて、意外と怖い話が苦手なあ~姫が口を押さえて叫びました。
「それがまた、恨みのこもったものすごい声で、聞いた者が腰を抜かして三日三晩熱にうなされたのだと」
「きゃあっ」あ~姫が耳をふさいで、イヤイヤをしました。
「またある時には、塔の窓から痩せた男が下を見下ろして、手招きをするのだそうです。まさかそんなところに人がいるとは思わないから、見た者はぎゃっと言って、後をも見ずに逃げて来るのだそうですが、もし手招きに応じていたら、どんな怖い目に遭わされていたかと……」
「もう無理、もう止めて」あ~姫が、青ざめた顔で、かしゆか姫へお願いしました。

 どたん。

 物音に二人が振り返ると、のっち姫が気を失って倒れていました。

「ほら、やっぱり頼りにならないんだから」くすくす笑ってかしゆか姫が言いました。
「もしかして、今のはでまかせ?」あ~姫がムッとして言いました。
「いえ、これは城下の居酒屋で聞いた話です。しかし、実際にそんな目にあった者が本当にいるかどうか、あやふやですけど」
「あなたはまた、そんなところに出入りして」
「しかし、お姉様、こんな城の中にいたのでは、世の見聞というものが広がりませんわ。御心配なく、屈強な供を付けて、お忍びで出かけただけです」
「それで、あなたは本当に幽霊がいると思いますか」
「いえ、私はそのようなものは信じません。もしいるとしたら、怪しき盗人かスパイの類でしょう」
「そうですか、ともかく、そこの腕自慢を起こしましょう」そう言って、あ~姫がのっち姫に手をかけたとき、その声が聞こえた。

 まるで地獄の辺土から響くような、苦しむ男の声が。

「きゃーっ」
「きゃーっ」

更新日:2010-05-28 20:56:22

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