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三人のお姫様とさびしい幽霊 1


 むかし、あるところに小さな国がありました。
 小さな国の真ん中に、王様の住む小さなお城がありました。
 小さなお城には、王様とお妃様、そして三人の王女様がおりました。

 ある時、お城の塔のてっぺんにある小部屋に、幽霊が出るという噂が立ちました。
 城中の者達のひそひそ話が、やがて国中に広まりました。

 そしてついに王様の耳にまで入ってしまいました。
「侍従長を呼べ」王様は、お付きの侍女に命じました。

「お呼びでございますか、国王陛下」王様の前に、侍従長がやって来ました。
「尋ねたい事がある。我が城に幽霊が出るとやら、それはまことか」
「は、そのような事を誰が」
「誰でも良い、本当か、と聞いておる!」王様は少しばかり短気でした。
「ははっ! そのような噂が確かに御座います。しかし誰も確かに見た、とは言わず、見た者から聞いた、と言うばかりで」
「何の事だ。もう良い。もし本当にそのような者がおるなら、さっさと退治せよ。我が城にそのような者が住みついておっては困る。しかと、家賃も取り立てよ」
「ご冗談を」
「冗談ではない! 家計の苦しきおり、良き小遣いじゃ。妃はケチでのう。王とはいえ、狐狩りすら思うように行けぬのじゃ」

 そこへ、凛々しい声が響き渡りました。
「お父様、そのような事を言っている場合ではありませぬ。怪しき幽霊とやら、我が剣の一振りで消し去ってみせましょう!」

「おう、姫か」王様は、目の中に入れても痛くないほど溺愛している三女、のっち姫へと声を掛けました。「何じゃまたそのような、男のなりをして」
「今しがた馬に乗り、森へと出かけて来たのです」のっち姫は、いつも男装でおてんばなので、知らぬ者からは王子か、または森番とさえ間違えられるのでした。「森番のジョゼフから、七面鳥をもらって来たのでお父様に見せようと、ここへ来てみれば、何やら面白そうなお話。私におまかせあれ!」

 元気に喋りながら、手に持った七面鳥をぶんぶん振り回すので、辺りに羽が舞い散りました。

「これこれ、そのような物を謁見の間に持って来る奴がおるか。厨へ持ってゆけ」
「そうです、お姫様、貴き姫君がなんとはしたない。それに、幽霊退治など、下賎な者に任せて、次回の舞踏会の衣装を……」侍従長が小言を言い始めると、のっち姫は睨みつけました。
「そのような下らぬ催しなど、出る気はない!」そう言って、七面鳥を侍従長の顔にぶつけました。
「わっぷぷ!」侍従長がひっくり返ります。

「あっははははは!」高らかな笑い声が、廊下の向こうへと消えていきました。

更新日:2010-05-28 20:53:56

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