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うるさいのはだれ?

挿絵 300*300

トミーぼうやはおなかがふくれて、まんぞくして、赤ちゃんベッドですやすやねむっています。
パパはお仕事に出かけたし、ママもぐっすりねむっています。
そばに座ってトミーを見ていたオコチカバーも、うとうとと、いねむりをはじめました。

“まあ、オコチカバーったら、まるで赤ちゃんみたい。
でも昨夜はゆっくりねむれなかったから、私もちょっとおひるねしましょう”

そこで家中、みんながねむってしまいました。

いったい、どのくらいの時間がたったのでしょうか。
きゅうに、わんわん、ぎゃんぎゃん、というがなり声で、みんな、おこされました。
トミーはびっくりして、「わーん、わーん」と泣きだしたので、
ママはあわてておきて、トミーをだきあげると、まどの外を見ました。

犬のコロがとびはねながらほえています。

「まあ、コロったら、ゆうびんやさんにほえているんだわ」

ママは顔をしかめました。

「オコチカバー、コロにほえるのをやめるように言って来てよ」

「オッケー」

オコチカバーはさっと家をとび出して、コロの耳の上に止まり、話かけました。

「きみきみ、なんでそんなに大きな声でほえるんだね?」

「えっ、あんたはいったい、だれだい? 
ぶんぶんばちに、にているけれど、ぼくの知らない人だね」

「ぼくはオコチカバー、赤ちゃんの世話人さ」

「ぼくは知らない人にはほえるんだよ。わんわん」

「おい、止めてくれよ。
トミーがまた泣き出すじゃないか」

「トミーっていったいだれだい?」

「あれ、きみ、知らないの? 
ここの赤ちゃんだよ。
昨夜、生まれたんだ」

「赤ちゃんだって?
ぼくはそんな人が家に入るのは見なかったよ」

「赤ちゃんは外から来るんじゃないんだよ。
お母さんのおなかから出てくるんだよ」

「へー」
コロはしっぽをぴんと立てて、大きな口をあけました。

「まあ、とにかく、これからは大きな声でほえちゃだめだよ。
トミーがおきちゃうからね」

「でも、だれか来たら、ほえるのがぼくの仕事なんだよ」

「ゆうびんやさんは毎日来るから、知らない人じゃないよ。
だから、ほえなくていいんだよ」

「じゃあ、しんぶんやさんや、はいたつのおじさんは?」

「そういう人たちも、知らない人じゃないから、ほえなくていいんだよ」

「ほえなかったら、ぼくはいったい、なにをしたらいいの? 
ぼくの役目をはたせないよ」

「これからは、夜、もしどろぼうがやって来たら、その時だけほえればいいよ。
そうすれば、いい犬だっていわれるよ」

「そうかなー。
でも、ほえられないんじゃ、たいくつだな。
ところで、その赤ちゃんって、いったいどんなものなの? 
ぼくも見たいな。」

「じゃあ、見せてあげるから、そっと窓の所へ来てごらん。
音をたてちゃだめだよ」

コロは前足を窓のさんにかけて、後足で立ち上がり、窓の中をのぞきました。
すると、小さなトミーぼうやがベッドの中で、お目目を開けて、
手を閉じたり、開いたりしていました。

「わー、あんなに小さな人、ぼく、はじめて見たよ。
かわいいね、ぺろぺろなめてあげたいな」

「すこし大きくなって、外に出られるようになったらね、きっと、君とあそばせてくれるよ。
かみついたりしないで、トミーの遊びあいてになってあげれば、
それが君のあたらしい仕事になるよ」

「うん、ぼく、ほえたりしないで、いい犬になるよ。
トミーぼうやをよくねむらせてあげるんだ。
そうしたら、早く大きくなって、ぼくと遊んでくれるからね」

コロはうれしそうに、しっぽをふりました。

更新日:2010-06-16 13:46:20

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