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オコチカバーはヒーロー

ララさんとも別れて、オコチカバーがミモマムのところに帰って来た時には、もう、あたりは真っ暗になっていました。

「それでピロさんは元気になったのね。良かったわ。明日の朝はきっと来てくれるわね」

ミモマムは大喜びです。

「うん、ぜったいに来るよ。
だけどミモマム、ぼくまたでかけたくっちゃならないんだ」

「えー、こんなに夜おそく、いったいどこへでかけるの?」

「うろつき猫に話をつけに行くんだよ。
猫は暗くなってから外に出て歩きまわるからね。
ちょうど出てきたところをつかまえられると思うよ」

「オコチカバー、気をつけてちょうだいよ。
相手はするどいつめを持った猫なのよ」

「だいじょうぶだよ。
ぼくは腕力で戦うんじゃなくって、口で説得するんだよ。じゃあ、行ってくるよ」

ピロおねえさんを傷つけた猫は、村のはずれの牛飼いのベンおじいさんの黒猫です。
オコチカバーが木の葉のかげにかくれて見ていると、黒猫はとびらのすきまからぬけ出してきました。
オコチカバーは猫のところへ近ずいて言いました。

「おい猫くん、ピロさんをきずつけたのはきみだね。
きみはうろつき猫で、小さな鳥やけものたちをきずつけるって、ひょうばん悪いのを知っているかい?」

「何だおまえは。ちっこいやつだね。
小さいくせになまいきに、おれにもんちゃくつける気かい?」

「ぼくはオコチカバーさ、赤ちゃんの世話人さ。
だけど、正義のみかたでもあるんだぞ。
だから、きみみたいに弱いものいじめをするやつを、ほおってはおけないんだ」

「おまえはおれさまにちょうせんする気かい? 
それならどっこい受けてやる。
ピロみたいにたたきのめしてやるぞ」

黒猫はオコチカバーにとびかかりました。
オコチカバーはすっと体をかわすと、猫はもんどりうって、すってんころりん。
おしりを打って

「あいたたた」

「このちびめ」

猫は怒ってまたオコチカバーにとびかかりましたが、オコチカバーはぴょんと空中に飛び上がったので、猫はいきおいついて前のめりに顔を地面にすりつけました。

「あちちちち」

猫はひめいを上げました。

「こんちくちょう」

猫は頭から煙をはいて怒り、また、オコチカバーにとびかかろうとしましたが、
オコチカバーは左へ右へとすいすいとかわして、そのたびに猫はころんで打ちつけたり、
すりむいたり、オコチカバーをつかまえることはできません。
それもそのはず、オコチカバーは猫の十倍ものスピードで動くことができるのです。

そのうちに猫はくたくたに疲れて、へたへたと地面に座りくずれました。

「なんてこったい。
こんなにすばやいちびっ子をおれは見たことがないぞ。
体中あっちこっち痛くてたまらない。
ざんねんだけど、おれのまけだ」

猫ははあはあと息を切らせながら言いました。

更新日:2010-06-16 13:51:10

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