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風のこどもたち

挿絵 275*225

林の中では、十人の風の子供たちが地面の上のかれ葉をかさかさ動かして、
たつまきを起こす練習をしていました。

「あれ、ララさんだ、ララさんだ。
どうして今ごろやって来たの?やって来たの?
ここはまだララさんには寒すぎるでしょう?寒すぎるでしょう?」

風の子供たちは声をこだまさせながら話すのです。

「そうなのよ、風のぼうやたち。
だいぶ春めいては来たけれど、林の中はまだ、木枯らしさんが吹くきせつですものね。
私のお友達をさがしに来たのよ。
めじろのピロさんを見なかった?」

「ぼくたち知らないよ、知らないよ。
ところでそこにいる小さな緑の人はだれ?人はだれ?」

「オコチカバーよ。
赤ちゃんのせわにんなの。
林の隣の家のトミーぼうやを、ミモマムと二人で世話しているのよ」

「へー、君はたつまき起こせるかい?起こせるかい?」

「ぼくらと一緒に飛び回って、遊ぼうよ。遊ぼうよ」

「きみたち、悪いけど、ぼくは遊んでいるひまはないんだよ。
ピロさんを見つけなければならないんだから」

オコチカバーはちょっと不機嫌に言いました。

「風の子たちって、気は悪くないけれど、とっても気まぐれで、
ちっともまじめにならないんだから」

「まあ、オコチカバーったら、もう何千年も生きている、お年寄りのようせいみたいに、
気むずかしいことを言っているわ」

二人は、がさがささわいでいる風の子たちを後にして、
松の木の下の、きいちごのしげみの中のピロさんのおうちへ行ってみましたが、
そこは空っぽでした。
それから、二人は一本一本の木の間を
「ピロさん、ピロさーん」
と呼びながら、飛んで見てまわりました。

林の反対がわに出て、オコチカバーは大きな声で、「ピロさん、どこにいるんだい?」
と呼びました。
その時、ララさんは、かすかな声が聞こえたような気がしました。

「静かに、オコチカバー、ほら、どこからか声が聞こえるわ」

「ピチュ ピチュ ピロ ピロ」

それは積みかさなってたおれた、枯れ木の山から聞こえてきました。
そばに近かずくとだんだん声は大きくなってきました。
枯れ木の山のむこうがわに、二人がまわると、そこにピロさんが目を閉じたまま横たわっているのを見つけました。

「ピロさん、ここにいたのかい? やっと見つけたよ」

オコチカバーは喜んで、ピロさんをだきおこそうとしましたが、
ピロさんは力がなくて起き上がれません。
ピロさんはそっと目を開けて言いました。

「オコチカバー、ララさん、来てくれてうれしいわ。
でも私、元気がないの。
三日前にうろつき猫にひっかかれて、つばさが折れてしまったの。
それから飛べなくなってしまったのよ」

ピロさんはとぎれとぎれに説明しました。

「ぼくがお水を運んで来てあげるよ。
それから小さな虫もつかまえてあげるよ」

「いいえ、オコチカバー、それではだめなのよ。
森の一番奥にある、いのちの木のところへ私をつれて行ってちょうだい」

「つれて行くったって、ぼくの力ではとても運んで行けないよ」

「私もそよ風だから、ピロさんを飛ばすことはできないわ」

そこでオコチカバーは緑の目をくるくる回して、いっしょうけんめい考えました。
そして良いことを思いつきました。

「ララさん、ここでピロさんのことを見ていてね」

言いのこすとオコチカバーは、林の中へもどって行きました。

更新日:2010-06-16 14:12:46

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