• 10 / 30 ページ
ララさんが、午後のひとときをすごして去って行くと、
天の道をゆっくりと歩いていた太陽が西へ向かっておりて行き、
やがて、黒ずんだ山の向こうへと消えてしまいます。
すがたが見えなくなった太陽が、私たちに、‘さよなら’のメッセージを送ると、
空に切れ切れに浮かぶ雲はみんな赤くそまるのです。

「トミーぼうや、見てごらん、お陽さまが、さようならを言っているよ。
今日も一日、終わりだね」

「オコチカバー、お陽さまはどこへ行ってしまったの?」

「地球のうらがわさ、そこに住んでいる人たちに光を与えるために。
それから、くらくなって、ぼくたちがねむれるために。
そして、明日の朝は、ぼくたちが目をさます、ずっと前にもどって来て、
また、ぼくたちに光をそそいでくれるんだ」

「お陽さまは一日中、はたらいているのよ。
それから、お月さまもよ。
ほら、見えてきた。今夜のお月さまは細い銀の弓。
毎晩、毎晩、すがたを変えて見せてくれて、
月光にのせて、私たちに夢をはこんできてくれるの。
夢の中で、わすれていたむかしを、思い出させてくれるのよ。
さあ、おやすみなさい、トミーぼうや、良い夢見てね」

ママがこもり歌を歌いはじめると、トミーはすぐにねんねしてしまいました。

「トミーぼうやはねむっちゃったよ、ミモマム
ぼくもねることにしようかな。
今夜は、ぼくはビスケットのあきかんの中でねむるんだ。
まだ、おいしいにおいが残っているからね」

「私はねる前にちょっと星空のさんぽに行ってくるわ。
星の間をぬって、だれも知らない国を見てくるわね。
じゃあ、おやすみ、オコチカバー。
あなたもいい夢見てちょうだい」

ミモマムは暗い夜空の、一番明るい星めざして、飛び立って行きました。


更新日:2010-06-16 13:48:14

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook