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永遠の奏  『羽根』 8


俺は花音を傷つけた



でも、これが一番彼女の為になると思った



俺みたいな奴の傍に居たら彼女の人生は・・



夢も希望も持てないだろうから・・






次の日から花音は来なくなった



何処かで、それでも来てくれるのかもしれない



そんな風に思っていた自分に気づく



少しの後悔と少しの懺悔








やがて数日が経ち、俺は花音の居ない生活を受け止めた



見舞いに来るのは母親と



たまに来る友人達





皆の目が哀れんでいるように感じた



俺はそんな時に笑顔を見せれるほど強くなかった







『一人にして欲しいんだ、帰ってくれ』








何度もこの言葉を言った




次第に友人たちは見舞いにも来なくなった








「それでいい、これでいい・・・こんな無様な姿を晒したくない」







俺はそう思っていた








ようやく一人で車椅子に乗ることが出来るようになった







車椅子に乗るのに少し手惑い、転んだりベットから落ちる時もあるけど



一人で出来る事が多くなってくると嬉しく感じていた








最近、病院の屋上へ行くようになった





それは喫煙をしながら、色々考えれる




外の雰囲気を味わいたいから





当り前に歩いていた 空の下




当り前に過ごしていた 時間






今はそれがとても大事なことのような気がしてならなかった







「カチ」







「フゥー」






屋上の金網越しに見える風景





空は青く白い雲がある





病院の隣にある高校で行われているサッカーの練習を見る





「俺も、サッカーが得意だった・・」




「だった・・」






「フゥー・・・」






そんな事を考えても仕方ない





屋上の周りを見る






俺、




スーツを着た男の人





数名の入院患者






何となく異空間





パジャマとスーツと車椅子





外の世界ではあり得ない






そんな馬鹿な事を考えた





そんな時によく思った・・・






「羽根があればこんな足なんか無くても気にしなくても済むのに・・・」









俺はそんな気持ちで天を仰いだ

























更新日:2010-05-20 08:02:00

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