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永遠の奏  『羽根』 3

花音は交差点に向かって歩いて行った・・・




「事故?」




救急車の後ろのドアが大きく開いて、救急隊員がベットを出しているところだった





『すみません、何があったんですか?』




近くに居た人に聞いた





『よく分からないけど、小さな子が車にひかれそうになったのを助けた人が引かれたみたいですよ』




『えっ?』





花音は事故現場の方を見た






そこには、小さな子供が母親に抱かれたまま泣く姿と




救急隊員に何かを聞かれている母親の姿







ピンクの可愛いリボンのついた小さな白い箱




そして、血まみれの花






「えっ・・」





『君!大丈夫か!!』




『君!!』





道路に横たわる、「永遠(とわ)」の姿があった





信じられない光景だった




永遠は救急隊員の声にも反応していなかった






「えっ・・・」




「もしかして、大変な事故だったの・・・」



「脚が変な方向に曲がっている・・・」




「血だらけ・・・」






『いやぁぁぁー!とわぁぁー!!』








花音は永遠の傍に駆け寄ろうとした





『コラ!君!』




『私の彼なんです!すぐそこで・・・私の誕生日で・・・とわぁぁ・・・』




『本当に君の彼かい?』




『はい』




『救急車に乗ってくれ!そして親御さんに連絡をしてくれ!!』





この出来事が




「夢であって欲しい」




「何かの間違いであって欲しい」





そう願うばかりだった・・・。
















数日後








目を覚ますと、見慣れない天井が見えた





「ここはどこだ・・」




身体が思うように動かない






目もぼんやりとしか見えないし、息苦しい気がした




何か、大事な事を忘れているような気がしてならなかった






何か分からないが、身体が思うように動かないのと痛みが伴い




思い出そうにも思い出せないでいた




そうこうしているうちに、俺はまた、深い闇へと沈んで行った






次に目が覚めた時に、母親の声が聞こえたような気がした





「かぁさん・・」





声を出したつもりだが、出なかった




目も顔も何かに覆われているような感じだった









「そうか・・俺は、花音の誕生日の日、交通事故にあったんだった・・」







「花音、怒ってるだろうな・・・」





俺は、その日が事故に遭遇した日だと思っていた







いつの間にか、俺は暗闇に再び吸いこまれた・・





数日後・・。








『永遠、まだ意識が戻らないんですか?』




『何度か、そう言う感じはあるんだけど・・この状態だと話しも出来ないから・・』




『お母さんは、少し休んでください。私がついてますから』




『・・ごめんね・・花音ちゃん』








花音は、永遠の事故以来、毎日病院に来ていた








「あの日、あの場所なんかで待ち合わせなんてしなければ・・・永遠がこんな姿に・・」




「自分のせいで、永遠は事故にあったんだ・・」






そう思っていた







「か・・花音・・」





『永遠ぁ!!』








花音は俺の声にとても驚いていた





『永遠、気がついたのね!永遠ぁ!永遠ぁ!』





耳が痛くなる程の大きな声で叫んでいた







目には大粒の涙をためていた




それから、花音がナースコールを押したのだろう




医者と看護婦が来たようだった





「そうか・・俺は病院にいるんだったな・・」








途切れ途切れの記憶がようやく繋がり始めた・・・


















更新日:2010-05-21 12:59:36

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