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【6月】 ほろ苦、ティラミス ~side SAWA~
『カラン カラ~ン!』
軽快なベルの音と共に、店のドアが開く。
そして中に入ってきたのはクールなモテ男改め、馬鹿で嫌味な甘党二重人格男、内藤だ。
あれから、約一か月の月日が流れた。
この男は飽きもせず、ちょこちょこと店にやって来ては、色んな種類のケーキを買って帰っていく。
そして母さんは、やらなくてもいいと言っているにも関わらず、サービスだと言っていつも様々なおまけをヤツに手渡すのだ。
「…また来たのね、内藤。」
私はかなりげんなりしながら、言った。
ヤツはいつもの様にニヤリと笑い、答えた。
「ああ、また来たよ?でもさぁ、紗和ちゃん。
お母さんからいつも、言われてなかったっけ?
…お客様には、『いらっしゃいませ。』だろ?」
…くぅぅぅうっ、ム~カ~つ~く~~~っ!!!
お気付きの方もいらっしゃるかもしれないがこの男、先日から何故か私の事を、下の名で呼ぶようになった。
しかもうっとおしい事に常連と化している為、母さんと彼は私についての愚痴を語り合うまでの関係になっている。
すると奥からいつもの様に、母さんが出て来て言った。
「あら!いらっしゃい、内藤君。」
「あっ、こんにちは。
あの、すみません。今日のお勧めは、なんですか?」
内藤は吐き気がするくらい甘ったるい笑顔を浮かべ、言った。
…それにしてもこの光景見るの、何回目だよ。
…ホント、勘弁して貰いたいわ。
「そうねぇ…。うん、今日のお勧めは、ティラミス!
お父さん、ちょっと味をリニューアルしたとかで、かなり自信満々だったから。」
母の言葉を聞き内藤は、今にも涎を垂らしそうな程嬉しそうに笑った。
「じゃあそれを、三個下さい。」
…出たよ、三個買いっ!
その細い身体の一体何処に、同じケーキばっかり三個も収まるってのよっ!?
しかし私は無言のまま、それを箱に詰め始めた。
その時また、店のドアベルが鳴った。
『カラン カラ~ン!』
振り返るとそこには私の幼馴染、太一が笑顔で立っていた。
「いらっしゃい、太一っ!」
私はとても嬉しくて、満面の笑みで言った。
すると彼は優しく微笑み、答えてくれた。
「おう、紗和。久し振り~!」
「太一君、いらっしゃい。
でも、珍しいわね。太一君が表から家に入ってくるだなんて…。」
母さんは、不思議そうに言った。
すると太一は少し恥ずかしそうに笑い、言った。
「…今日は、ケーキを買いに来たんで。」
その時太一の背後から、私よりも更に小柄な女の子がちょこんと顔を覗かせた。
ふわふわとカールした、茶色の明るいショート・ボブ。
彼女は特別美少女という訳ではないが、花柄のワンピースがよく似合う、愛らしい雰囲気を纏っている。
「あら、太一君。…もしかして、彼女?」
嬉しそうに、母さんが聞いた。
その瞬間私の心臓は、すごいスピードで脈打った。
「…ええ、まぁ。」
太一はそう言うと、真っ赤な顔で幸せそうに笑った。
その隣では彼の恋人も、同じ様に照れくさそうに微笑んでいる。
それから彼らはケーキをひとつずつ選び、帰っていった。
当然の様に、手を繋いで…。
「あの太一君に、彼女ねぇ。
…で、紗和。アンタにはそういう人、いない訳?」
いつもは笑って流せる母さんの嫌味も、今日の私には強烈な一撃と化した。
でも私はいつもの様に、彼女の問いに答えた。
「…そんなの、いる訳ないじゃん。
それに毎日こんなに扱き使われてて、そんな暇、何処にあるってのよ?」
すると母さんは呆れたように肩を竦め、笑った。
それから内藤にまたしてもおまけを手渡し、奥に入っていった。
『カラン カラ~ン!』
軽快なベルの音と共に、店のドアが開く。
そして中に入ってきたのはクールなモテ男改め、馬鹿で嫌味な甘党二重人格男、内藤だ。
あれから、約一か月の月日が流れた。
この男は飽きもせず、ちょこちょこと店にやって来ては、色んな種類のケーキを買って帰っていく。
そして母さんは、やらなくてもいいと言っているにも関わらず、サービスだと言っていつも様々なおまけをヤツに手渡すのだ。
「…また来たのね、内藤。」
私はかなりげんなりしながら、言った。
ヤツはいつもの様にニヤリと笑い、答えた。
「ああ、また来たよ?でもさぁ、紗和ちゃん。
お母さんからいつも、言われてなかったっけ?
…お客様には、『いらっしゃいませ。』だろ?」
…くぅぅぅうっ、ム~カ~つ~く~~~っ!!!
お気付きの方もいらっしゃるかもしれないがこの男、先日から何故か私の事を、下の名で呼ぶようになった。
しかもうっとおしい事に常連と化している為、母さんと彼は私についての愚痴を語り合うまでの関係になっている。
すると奥からいつもの様に、母さんが出て来て言った。
「あら!いらっしゃい、内藤君。」
「あっ、こんにちは。
あの、すみません。今日のお勧めは、なんですか?」
内藤は吐き気がするくらい甘ったるい笑顔を浮かべ、言った。
…それにしてもこの光景見るの、何回目だよ。
…ホント、勘弁して貰いたいわ。
「そうねぇ…。うん、今日のお勧めは、ティラミス!
お父さん、ちょっと味をリニューアルしたとかで、かなり自信満々だったから。」
母の言葉を聞き内藤は、今にも涎を垂らしそうな程嬉しそうに笑った。
「じゃあそれを、三個下さい。」
…出たよ、三個買いっ!
その細い身体の一体何処に、同じケーキばっかり三個も収まるってのよっ!?
しかし私は無言のまま、それを箱に詰め始めた。
その時また、店のドアベルが鳴った。
『カラン カラ~ン!』
振り返るとそこには私の幼馴染、太一が笑顔で立っていた。
「いらっしゃい、太一っ!」
私はとても嬉しくて、満面の笑みで言った。
すると彼は優しく微笑み、答えてくれた。
「おう、紗和。久し振り~!」
「太一君、いらっしゃい。
でも、珍しいわね。太一君が表から家に入ってくるだなんて…。」
母さんは、不思議そうに言った。
すると太一は少し恥ずかしそうに笑い、言った。
「…今日は、ケーキを買いに来たんで。」
その時太一の背後から、私よりも更に小柄な女の子がちょこんと顔を覗かせた。
ふわふわとカールした、茶色の明るいショート・ボブ。
彼女は特別美少女という訳ではないが、花柄のワンピースがよく似合う、愛らしい雰囲気を纏っている。
「あら、太一君。…もしかして、彼女?」
嬉しそうに、母さんが聞いた。
その瞬間私の心臓は、すごいスピードで脈打った。
「…ええ、まぁ。」
太一はそう言うと、真っ赤な顔で幸せそうに笑った。
その隣では彼の恋人も、同じ様に照れくさそうに微笑んでいる。
それから彼らはケーキをひとつずつ選び、帰っていった。
当然の様に、手を繋いで…。
「あの太一君に、彼女ねぇ。
…で、紗和。アンタにはそういう人、いない訳?」
いつもは笑って流せる母さんの嫌味も、今日の私には強烈な一撃と化した。
でも私はいつもの様に、彼女の問いに答えた。
「…そんなの、いる訳ないじゃん。
それに毎日こんなに扱き使われてて、そんな暇、何処にあるってのよ?」
すると母さんは呆れたように肩を竦め、笑った。
それから内藤にまたしてもおまけを手渡し、奥に入っていった。
更新日:2010-06-01 00:14:48