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第8話 バンド

教室にもどった2人、教室には生徒がまだいてざわざわしていた。
とりあえず2人はかえる準備をしていた。
「よぉー蓮、お前は部活決まったか?」
後ろからこえがしたので振り向くと坂本がいた。
「まだだけど、君は・・・陸上部か・・・」
蓮が声を落とす。
「なんだぁ、不甲斐ない顔して、まあ俺は陸上部ってのは当たり前だからな、ここに入らずどこに入るってんだ!」
坂本も皆きまっているようだ、なんか取り残されたような気がしてやまない。
「いいな、お前は・・・陸上と言うとりえがあって。」
うらやましそうに蓮が言う。
「おまえも陸上部に入ったらどうだ?あんなスタミナがあれば十分通用すると思うがな。まあそんなの君が決めることだ、まだ1週間あるんだからあせるなよ。」
そういって坂本が帰っていった。あいつはとりえがあって本当にうらやましいと思っている。
蓮はそう思いながらも帰ろうとした。
「じゃあね蜜柑、お先に失礼します。」
「うん、私まだ用事があるから、さき帰っててね。」
蜜柑もすっかり落ち着いたようだ。蓮もよかったと思うばかりである。まあ部活がなかったのは残念なことだが、蜜柑が元気になっただけで蓮はうれしかった。

蓮は教室をでて廊下を歩いていた。
暗く静かな廊下である。朝の活気と大違いである。少し寂しい廊下を一人あるくのはなんともいえず空しいものである。今日もいろいろあったなあと思っていたところ・・・。
「うん?」
蓮があしを止めた。何かを見つけたようである。蓮が見た方向は音楽室だった。ドアが開けっ放しになっていた。蓮は音楽室に入っていった。
音楽室も広く、ざっと100人は入るくらい広い。しかし蓮はそんなこと気にせずあるものに近寄った。
「ドラム・・・か・・・」
そこにあったのはドラムセットだった。
1バスドラム、2タムタム、スネアにハイハットが1つずつ、ライドシンバルとクラッシュシンバルが1つずつ、フロアタムが1つのなんともシンプルなセットである。
「へえ~こんなところにあったんだぁ。」
蓮も軽く関心していた。スネアにスティックが引っかかっていたが結構汚れている。かなり古いと見た。
蓮はふっと息をはいた。音楽室はシーンとしている。日も赤くなってきた。蓮は少しドラムセットを見つめた。
「まさか、こんなところであうとはな・・・・」
じっとドラムセットを見つめる蓮。軽い笑みをうかべていた。蓮の血がさわぎ始めた。
「もう、縁がないと思っていたが・・・」
懐かしそうな表情を浮かべる。蓮は荷物を置いた。
「やっぱり俺とコイツは別れられなかったか・・・」
蓮はドラムステックを持ちドラムの前に座った。







「ああ、おそくちゃった、早く帰らないと。」
蜜柑が用事を済まして帰ろうとしていた。もう遅いし暗くなってきていた。
蜜柑が教室から出た。
「あれ?」
なにかに気づく。人は一人もいない、しかしどうしてか分からないが、静かではないような気がした。よく聞くと窓がピリピリきしんでいた。
「おかしいなぁ?地震かな?」
しかし地震ではないことはすぐにわかった。しかしなにか騒がしい。蜜柑が耳をすます。
「何か・・・聞こえる・・・」
すっと黙る蜜柑、するとどこからともなく音が聞こえている。それと同時に窓がきしみ音を出す。
音が聞こえる方向に近寄ってみる。するとおとの正体が分かったようだ。
「これは・・・ドラム?」
こんな時間に誰かがドラムを叩いている。すごい音だ、いや大きいだけじゃない、強弱がはっきりとしたドラミングである。
「音楽室からだ!」
蜜柑が音楽室に向っていく。ドラムの音がどんどん大きくなる。蜜柑も不思議でたまらない。バンドをやっていた自分にとって、ドラムにも興味があるからだ、
「誰だろう?」
音楽室に着いた。扉が若干開いていた。ドラムの音はおさまらないどころかどんどん激しさを増していった。
早い早い早い、ありえない早さである。蜜柑はどきどきしながら音楽室を覗いた。
「うそ・・・」
蜜柑が声を漏らした。そこには彼女の友達が叩いていた。

更新日:2010-06-13 03:36:37

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