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あれから蓮は保健室に連れて行かれた。蜜柑も一緒に保健室に行った。保健室には先生が必死に蓮の治療をしていた。いや保健の先生だけでなく校内病院の先生までいたため、ただごとではないということだけが蜜柑には分かっていた。
しかし蜜柑には蓮が今どんな状態でどういう状況に陥っているのか一切分からなかった。
蜜柑は保健室を出て、外で蓮の無事を願った。
ただただ声にならない声で蓮の無事を願った。

保健室内が落ち着いて校内病院の先生が帰っていった。そしてそのあとに保健室の先生が保健室から出てきた。
「先生、どうなんですか?蓮の状態は・・・」
立ち上がって先生に聞く。
「かなり危険な状態だったわ。」
真剣な表情で言う。蜜柑も真剣に聞く。しかし先生の表情もすぐに穏やかになった。
「まあ、話は保健室内でしましょう。」
優しい表情だった。蜜柑も少し落ち着き保健室に入る。
蓮は点滴をされていて眠っていた。
蜜柑と先生は椅子に座った。
「危険な状態だったって先生おっしゃっていましたけど、くわしく教えて下さい。いったいどうなったんですか?」
静かに蜜柑がきく。先生はしばらく黙っていたが蜜柑に説明した。
「かんたんに言うと脱水症状極度の空腹ね。ひどかったのは脱水症状だったんだけど・・・運ばれてきたときはかなりやばい状態だったわ。」
「そんな・・・蓮が・・・」
信じられない。たしかに水が欲しいといっていたけど・・・
「あとちょっとでも水分が失われていたら最悪死んでいたかもしれなかったわ。でも静岡さんの適正な判断でなんとか一命はとりとめたけど・・・まだまだ様子見状態ね。」
ただ風邪をひいたと思ってたのに、あのときも蓮は大変な状況だったんだ・・・なのに私ったらそれを気づかず蓮に振舞っていた・・・
そんなことを考えるといつの間にか泣いていた。
「ちょっと、静岡さん大丈夫?べつにあなたのせいじゃないわ。」
先生も慰めてくれる。しかし蜜柑は蓮のことに全く気づかなかったことに後悔していた。
「私、蓮が水欲しいって言っていたときもなんにもできなかった。あんな状況だったのにぜんぜん気がつかなかった。」
「静岡さんが悪いわけじゃないわよ。蓮くんも心配かけたくなかったんじゃない?」
自分を責める蜜柑。しかし今更後悔しても蓮があんな状況になったのは変わりはない。だが自分の未熟さと、今何もできない自分にたいしてただただ悔しかっただけだ。
「―でもね、これだけは、分かってほしいの。あの状況で気づかないふりをするのは大変つらいことなの。それを覚悟しての静岡さんへの対応は本当に心配かけたくないと思ったからよ。常人じゃあんなことになったら返事はおろか歩くことさえままならなかったんだから。静岡さんが気がつかなかったっていうのも全て蓮くんのがんばりなの、それだけは分かってほしいの。」
蜜柑をなでながら先生は言った。
「蓮が・・・私のために?」
一瞬疑った。蓮が私のためにがんばってくれた、それだけでうれしかった。
「うん、そうだよ。でも蓮くんったら無茶のしすぎよね・・・なにもここまで我慢しなくてよかったのに。まあそこが蓮くんの長所であり短所なのかもね。」
やさしく微笑みながら言う。蜜柑もようやく泣きやんだ。
「でももう大丈夫よ。たぶん明日には目が覚めるでしょうに・・・今日はもう遅いから帰ってゆっくり体を休めてね。蓮くんのことは心配要らないから。」
そういえば昨日今日で蓮は遅刻してきた、これにはなんとかしてあげたいと蜜柑がおもった。
明日から本格的に授業が始まる。蜜柑も蓮も2日目からこんなことになるとは思っていなかった。今日もいろいろとありすぎた。そうおもうと疲れが一気に蜜柑に押し寄せてくる。

「じゃあお言葉に甘えて。今日は本当に失礼しました。」
そういって保健室を出た。蓮のことは気にしつつ、蓮になにか買ってあげたいと思った。
「何がよろこぶかなぁ~」
そういいながら学校から出て行った。

保健室は静かになった。
蓮もだいぶ落ち着いたようでぐっすり寝ていた。
ひそかに先生が言った。
「このこ・・・どこかでみた気がするんだけど・・・気のせいかしら。」

こうして蓮の地獄の1日が終わった。

更新日:2010-06-06 00:01:43

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