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第四章 a fairy tale of butterfly

西暦199×年。×月。某所。

木魚の音。
線香の匂い。
そして……
「小さな娘さん一人残して……ねえ」
「車はぺちゃんこで……二人とも即死だったって……」
「あの子、これからどうするのかしら?」
「お父さんのお兄さんのおうちに預けられるんですって」
「でも、あの家って小さなお子さんが三人もいるし……」
「なんだかんだ言っても、どの家も本音では引き取るの嫌がってるらしいよ」
囁き合う喪服の大人たち。
これが少女にとっての最古の記憶だった。


西暦2010年。6月上旬。A市内某所。

真っ暗な部屋の中、パソコンのディスプレイが放つ光に照らし出される少女の顔。
その顔は人形のように無表情でありながら、口だけは規則的に動いている。
「私は妖精私は妖精私は特別私は特別」
口の動きに合わせるように十本の指が凄まじいスピードでキーボードの上を動き、画面に文字が紡ぎ出されていく。

今日は朝からずっと雨でしたね、ヽ`、ヽ`个o(・ω・。)`ヽ、`ヽ、
雨の日は外に出られなくってヤダョォ(>へ<。)=(。>へ<)
…なんて御主人様・お嬢様もいらっしゃるかもしれませんネ。
でもでも、さぁらは雨がだぁいしゅき(*>ω<*)なんですよ?
妖精の国では、雨が降るとみんなでお外に出て水浴びするんですヽ(*´∀`*)ノ
これがとっても冷たくって気持ちイイ(★´∀`★)のです!
ァ( ゚д゚)
今ぁ…さぁらが裸になってるとこ想像しましたね~!
もう!
エッチな御主人様・お嬢様は嫌いですう!
ぷんしゅかo(`ω´*)o

むせ返るような甘い香りが充満する部屋の中で、少女はかすかに笑った。


更新日:2011-04-12 22:17:33

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