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第6.5章 fascinating virgo PLAYS

西暦2010年。8月上旬。A市日向町。

 公園、バーベキュースペース、レストラン、売店などが完備されたヨットハーバー“マリーナ日向”は、快晴の夏空の下で思い思いに時間を過ごす人々で賑わっている。
 桟橋に係留され、ゆるやかな海面のさざめきにあわせて微動する多数のヨットやトレジャーボートの中に、一際異彩を放つ巨大なクルーザーが一艘あった。
 全長にしておよそ七十メートルほどはあろうかという白亜のそれは、日本屈指の複合企業として名高い能登グループが所有するクルーザーである。
「遅いですわねえ」
 白いレースのリボンで結わえた肩までのツインテール。気品が漂う逆三角形のフェイスライン。アーモンド形の緩やかなつり目と上品な造作の鼻と唇。モデルにも決して引けを取らない決め細やかな白い肌とすらりとした体躯。
 ベージュのタンクトップの上にオレンジのタンクトップセーター。カーキ色のスカート調キュロットパンツ。ナチュラルカラーのグラディエーターサンダル。
 メインサロンに設えられた革張りのソファに腰掛けた能登凛がため息を吐いた。
「お兄さ~ん、おかわり~」
 後頭部の上方で結い上げた“お団子”とフェイスラインに沿うように伸びる左右対称の前髪。髪色は落ち着いたブラウンカラー。蟲惑的な瞳と筋の通った高い鼻。ルージュを引いた薄い唇。透き通るような白い肌としなやかな長身。
 大胆なスリットの入った真紅のロングドレス。エスニックなデザインのウエッジサンダル。大きなエメラルドが埋め込まれたネックレス。
 サルビアは能登凛とテーブルを挟んだ正面に座し、空になったワイングラスを掲げる。
 ワインボトルを持った執事服の男性がすぐにやって来て、グラスを文字通りワインレッドの液体で満たした。
「……むう」
 カラスの羽のような漆黒のロングヘアは市松人形を思わせる“姫カット”。クールな印象を与える三角目と高い鼻と薄い唇。能登凛やサルビアに負けす劣らずの白い肌と美しいスタイル。
純白のマキシ丈ワンピースとシンプルな白いサンダル。
 サルビアの隣に座る中原沙夜子はサロンの出入り口から見えるデッキを睨んでプクっと頬を膨らませている。
「やれやれ……」
 180センチはあろうかというほっそりとした長身。首の中間辺りまである緩くパーマのかかったアッシュグレーの長髪。大きく力強い双眸と薄い青の瞳。すっと高い鼻。両端が上がった唇。その西洋人のような造作の顔には縁のない眼鏡と火の点いた煙草。
 胸元のボタンを数個外して開けた白い長袖のシャツ。破けたジーンズ。そして黒い革のブーツ。
 真夏の太陽がさんさんと照りつけるデッキで、大取渚はすぐ先にあるサロンの中から飛んでくる非難の視線をひしひしと感じながら柵に背を預けている。
「おい藤原、今何時だい?」
 前髪の左サイドから後ろ髪にかけては首をすっぽりと覆い尽くすように長く、右サイドは短く刈り込まれて短くなった変則的なヘアスタイル。快活な青少年を思わせるくっきりとした目鼻立ち。広い肩幅と豊満な二つの膨らみが印象的ながっしりとした長身。少し日に焼けた健康的な肌。
 白いチューブトップキャミソールとその上に羽織ったチェックの半袖シャツ。ブラウンのクロップドパンツ。海外ブランドのバスケットシューズタイプの運動靴と同ブランドのキャップ。
 大取渚の向かいの柵に寄りかかって桟橋のほうを眺めていた後藤要は、傍らの人物に呼びかけた。


更新日:2011-05-21 03:14:21

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