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小説

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星になった少年


 自分も病気で苦しんでいた友人が、「筋ジストロフィー症」という難病と闘う子どもたちのために何かをしたいと、わたしに持ちかけてきたのは高校二年の冬だった。

 ふたりでできることは何か、と考えた末、詩集を作ることにし、友人の詩にわたしが挿絵をつけることになった。
 その頃は、コピーサービスなどもなく、ガリ版印刷が精一杯。放課後遅くまで、鉄筆で原紙に丁寧に文字を書き、挿絵を描いた。
 そうしてできあがった百部ほどの本を、次の日、早めに登校して昇降口に陣取って販売した。始業時間前に完売し、収益金を県内にある筋ジストロフィー症の療養所に送った。

 ほどなく、療養所から礼状と共に一冊の本が送られてきた。
『星への手紙』と題された詩集は、そこに入院しているK君という中学生が書いたものだった。
 その中の一節に、わたしは胸のつぶれる思いがした。

「ぼくは星になって、星から星への郵便配達をするんだ」

 卒業でわたしたちの活動は中断したが、K君に会いに行こうという計画を立てた。
 最初はわたしの都合がつかず、友人だけが行った。夏にはわたしも行けるので、連絡すると、K君から返事が来た。
 夏休みは東京の自宅で過ごすのだという。

「夏休みが終わったら、また、あいましょう」

 便せん一枚に、ふるえる大きな文字。
精一杯力を振り絞って書いた彼の手紙。
わたしは、涙があふれて止らなかった。

 突然、K君の訃報が届いた。手紙をもらった数日後のことだ。
あまりのショックに友人もわたしも言葉を失った。
ところがその二日後。信じられないニュースが耳に飛び込んできた。

 はくちょう座に新星が発見されたという!

 この奇跡ともいえる偶然に、わたしは感謝せずにはいられなかった。
急いで友人の家に走り、このニュースを伝えた。
星になって、星への手紙を配達すると言ったK君。
 その願いが叶ったのだと、わたしたちは信じた。信じたかった。
そうすることで、わたしたちの心も慰められるような気がしたから。

夕暮れの海で、昇ってきたはくちょう座に向かって、わたしたちは歌を歌い続けた。
それは1976年7月のことだった。

                              (執筆 2000年)

更新日:2010-05-03 15:20:17