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第二章~アズ家と『消失伝説』の関係について~

案内された広間では、4人がくつろいでいた。
「あぁ、あんたらが二重予約の人ね。民宿から話は聞いてるから自由に泊まっていけばいいさ。幸い、この屋敷には部屋ならいくらでも余っているし。ただし、ちょーっぴり埃臭いかも知れないけどさ」
恰幅の良いおばさんが豪快に笑う。
「へぇ。学者さんって言うからメガネの男を想像してたら、まさか女の子とはね。びっくりだ」
ギターをいじりながら、色白で細身の若者が言った。
「フレイ、あんたこの子たちにちょっかい出しなさんなよ! ……まぁ、部屋には内鍵があるし、それにいざとなったらアタシが助けてやるから安心して眠ればいいさ」
ソファの背もたれに肘をかけながら、威勢の良さそうな女性がカラカラと笑う。
「うるさいな、初対面の子を襲うほど落ちぶれちゃいないっての」
「はっは、色魔がよく言うわ」
からかわれたギターの若者は拗ねたような顔になって、ギターに目線を落とす。
そして部屋の隅では小さな女の子が一人。本を読むのに夢中で顔をあげる気配もない。

「はは、なかなかに面白い面子でしょう? これがウチの家族です。妻のエルザに息子のフレイ、長女のサンに末娘のミル。そして私がニック・アズと言います」
「アズ……? それって」
気付いたシルミンにニックがにこりと笑う。
「はい。御推察の通りです。この島の名はアズ家の名から取られています。かつてはこの島の大部分がアズ家の物だったこともあるんですよ。とは言え、今はただの没落貴族ですけどね」
これはどうやら凄い家に招待されてしまったらしい。シルミンは今頃緊張してきた。
しかし、普通に家の人に話しかけているリリィには、そんな緊張は微塵もないようだ。さすが留学生。場に馴染むのには慣れている。素直に拍手したいね。

更新日:2011-05-06 22:30:57

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